低価格なHD(高画質)テレビ会議システムを開発し、徐々に存在感を増しつつあるベンチャー企業がある。米ポリコムでテレビ会議システムを開発していた技術者が2003年に創設した米ライフサイズ・コミュニケーションズである。日本では日立ハイテクノロジーズが同社製品を扱っている。アジア太平洋地区営業担当ディレクターのウイリアム・ユー氏にテレビ会議を取り巻く動向を聞いた。(聞き手は白井 良=日経コンピュータ)
インフルエンザをきっかけとしたテレビ会議の引き合いは増えているか。
直接的な引き合いはあまりない。将来的には伝染病や災害対策としてのニーズもあるかもしれないが、今は様子見の段階だろう。現段階では、出張コスト削減の手段として興味を持つ企業が多い。
こうしたニーズに応え、5月にはコストパフォーマンスの高い機種として「Express 200」シリーズを追加した(関連記事)。実勢価格でSD(標準画質)のテレビ会議と競合できるレベルながら、HD(高画質)のテレビ会議を行える。市場のHD化を進める戦略的な位置付けとしている。
安いだけではない。既存機種の利用者から頂いたニーズを反映して高機能化させている。例えばパワーポイント資料を会議映像とは別のディスプレイで共有する機能を追加した。
HD化の価値はどこにあるのか。
これは体験してもらうしかない。これまでの電話会議やテレビ会議に比べて目や耳が疲れない。これだけでも生産性が上がると思う。
生産現場や品質管理など利用可能なフィールドを拡大できる点もHDのメリットだ。例えば工場の生産ラインをカメラで写して、不良個所を遠隔地から見て意思決定するといったことができる。テレビ会議システムの筐体が小さいため、小型のディスプレイとともに現場へ容易に持って行ける。また、HDだから問題個所をくっきりとした映像で見られる。SDではそれが難しかった。
実際、韓国のある自動車会社で全世界の工場に導入してもらっている。それ以外にも遠隔医療や教育機関、企業研修、政府機関が使っている。ハリウッドでは映画制作会社が役者のオーディションに使ったり編集に使ったりといった例もある。
在宅勤務への応用もできそうだ。
実は私自身が在宅勤務者で、自社のテレビ会議を使っている。