2008年12月18日付けでアドビシステムズの新代表取締役社長に就任したクレイグ ティーゲル氏に,日本市場の印象を聞いた。併せて,同席した米アドビシステムズのクリエイティブソリューションズ事業部門担当シニア バイスプレジデントのジョン ロイアコノ氏に,競合他社に対する強みを聞いた。
代表が感じた日本市場の特徴は?
ティーゲル氏:全体的にモバイル・コンテンツ関連の取り組みが多彩な点はユニークだと感じます。弊社の製品に愛着を感じてくれる日本のユーザーの多くが,紙メディア系のクリエイティブに従事している点も特徴です。そして,世界の中でも日本のクリエイタは特にコンテンツの質を守ることを大切に考えていると理解しています。
紙媒体の制作環境では,Creative Suite製品のバージョン2以降の普及が今ひとつという現状もあります。
ティーゲル氏:まだ古い環境を活用している制作者がいるという認識はあります。ツールのバージョンアップに躊躇する要因は複数です。例えばソフトを入れ替えるにはハードウエアから見直さなければならない場合があることもそのひとつ。ですから,新しいバージョンのツールを使うことで得られる利点を提示し続けなければなりません。
特に日本の出版関係社は紙から電子媒体に流通の領域を広げるためいくつかの課題を抱えていると考えます。ですが,なにも紙から電子にリプレイスすべきという話ではありません。同じ素材を使いつつ,紙とウェブの両方に活用できる環境作りのお手伝いをしたい。
例えばAdobe InDesign CS4 には雑誌向けデータをクリックひとつでウェブ向けのデータに書き出す機能が付いています。こうした機能でユーザーに新しい機会が提示できるか,新しい分野に挑戦するモチベーションを上げられるか。これが普及のポイントだと考えます。
マイクロソフトは優位に立っているかのように見せるのが上手い
2008年,アドビはAdobe Flash関連技術をAdobe Flash Platformという概念の下にまとめました(関連記事「すべてのディスプレイにFlashを!」)。プラットフォーム市場にはサンマイクロシステムズのJava FXやマイクロソフトのSilverlightといった競合が存在しますが,Flashの強みは?
ロイアコノ氏:マイクロソフトは市場にメッセージを打ち出すのが上手い。あたかも市場で優位に立っているかのように見せることが上手いですね。しかし,Flashは世界の99%のPCおよび,数億の携帯端末が搭載しています。
マイクロソフトは我々を追随する立場です。追随のためのお金も相当使っているでしょう。すでにパートナーの多い弊社はありがたい立場です。Java FXについては製品をリリースしたばかりなので,まだ市場で話題になっているとは言えません。
プラットフォームとして優位に立っているアドビはネットの使い勝手に対し大きな責任を負っていると考えます。2008年10月にリリースしたFlash Player 10はテキストレイアウトの柔軟性が高いので,読みものをFlash化する利用方法が考えられますね。視覚障害者が文字情報を取得できるようなアクセシビリティ対応機能について,どう取組みますか?
ロイアコノ氏:基本のプラットフォームを提供する企業として,アクセシビリティについて考えることは大切です。Flash Player 10のテキストレイアウト・フォーマット機能のアクセシビリティに関する技術情報の詳細まで私は把握していませんが,技術チーム側でテキストのアクセシビリティ機能の実現に取り組んでいるという認識はあります。
Adobe MAX Japan 2009の見どころは?
ティーゲル氏:全部です!(笑)。まだアジェンダをすべて把握し切れていませんが,米国からAdobe MAX 2008に出演したスピーカーが多数登壇します。セッション内容は網羅性を高めていますし,日本の事例を紹介するセッションを多数用意しました。
サンフランシスコで開催されたAdobe MAXのように,お芝居風の演出でデモをするような計画はありますか?(関連記事「デザイナーとデベロッパの協業を支援,米Adobeが開発中のツールを披露」)
ティーゲル氏:日本式で,楽しんでいただけるようにがんばります。