写真1●巨大スクリーンに映し出されたアドビの主力商品用アイコン。講演前の会場にはヒットソングが大音響で流されていた
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 米San Franciscoで開催されている米Adobe Systemsのプライベート・カンファレンス「Adobe MAX 2008」は米国時間2008年11月17日,アドビシステムズCEOのシャンタヌ・ナラヤン氏が登壇する基調講演で幕を開けた。基調講演の会場である巨大マルチスクリーンを設置した大ホールはほぼ満員(写真1)。登録者は11月17日時点で5000人に達するという。

Flashテクノロジをひとくくりに

写真2●シャンタヌ・ナラヤンCEO。事業の幅を広げると語った
写真2●シャンタヌ・ナラヤンCEO。事業の幅を広げると語った
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写真3●ナラヤン氏から「次はハリー・ポッターです」と紹介を受けて登場した,最高技術責任者のケビン・リンチ
写真3●ナラヤン氏から「次はハリー・ポッターです」と紹介を受けて登場した,最高技術責任者のケビン・リンチ
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 ナラヤン氏は,「一般消費者のネットの活用場所はリビングに広がっている。そしてエンタープライズの分野では,(サービスの使い勝手の)コンシューマ化が求められている」と,同社のかかわる範囲が大きく広がっていることを説明(写真2)。こうした求めに応じるためには,あらゆる機器で閲覧可能なコンテンツ作りが重要だと語り,Flashの優位性をあらためて取り上げた。さらに,Flashに関連する技術の総称を「Adobe FLASH PLATFORM」と名付け,目的と手段の単純化を試みていることを示した。

 ナラヤン氏は,一連の技術のうち,現在開発中の「Adobe Flash Catalyst(旧Thermo)」は,カギとなるツールだと語った。Adobe Flash Catalystはデザイナーがレイアウトしたグラフィックをコード化して書き出す仕組みで,デザイナーとプログラマの協業を支援する。こうした新しいテクノロジを用意して,ITからエンタテインメントまでさらにFlash活用の場を広げて行く構えだ。

 続いて最高技術責任者のケビン・リンチ氏が登場。これからのアドビが重視するキーワードとして,「クライアント+クラウド」「ソーシャル・コンピューティング」「デバイス+デスクトップ」の3つを挙げた(写真3)。さらに,11月17日にプレビュービルドの公開が始まったFlashPlayerの最新版「FlashPlayer 10」の特徴を紹介しつつ,表現力の強化について説明した。FlashPlayer 10に関しては,他のOSに先駆けてLinux向けの64bit版FlashPlayer 10(アルファ版)を同日に発表した。64ビット版を加えることで3D処理など表現の幅を広げることが狙いだ。リンチ氏は,現在公開中のオンラインによる写真の補正と管理サービス「Adobe Photoshop Express」のモバイル版の開発にあたっても,FlashPlayerのLinux対応は重視していると語った。

ディズニーのCTOやシュワ知事の妻も登場

写真4●ニューヨークタイムズ閲覧アプリ。表示範囲の狭い環境ではレイアウトが単純になる
写真4●ニューヨークタイムズ閲覧アプリ。表示範囲の狭い環境ではレイアウトが単純になる
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 次にリンチ氏は,ディズニー インタラクティブ メディアグループCTOのバド・アルバース氏を壇上に招き,ウェブ・コンテンツがテレビと同等に広く求められるメディアとなったことを紹介した。ディズニーのテレビ向け映画「キャンプ・ロック」をウェブサイトで無償掲載したところ,24時間で86万人がアクセスしたという。Flashビデオによってインフラが整った現在では,ウェブ配信がビデオの売上げにも良い影響を与えるようになったと語った。

 Adobe AIR 1.5を活用した事例では,ニューヨークタイムズのマイケル・ジンバーリスト氏が登壇。次世代の新聞として現在開発中のAIRアプリケーションを紹介した。ニューヨークタイムズの記事をオンラインでもオフラインでも閲覧できるアプリケーションだ(写真4)。

 PCのディスプレイのように大きい環境で閲覧した場合は,新聞紙面とほぼ同じレイアウトで表示される。モバイル端末のように小さいディスプレイの場合,段組みを減らしたり,写真を小さくするといったレイアウトの最適化が自動で行われる。ページを横方向にスライドさせる,下方向に次の紙面に移るなど操作も簡単だ。デモではLinuxを搭載したモバイルでタッチ・インタフェースを使いながら本アプリケーションを操作する様子も見せた。

 続く事例,カリフォルニア博物館の「California Legacy Trails」は,アーノルド・シュワルツェネッガー知事の妻,マリア・シルビア氏が紹介した。シルビア氏は制作プロジェクトの一人だそうだ。「カリフォルニアといえばみんなハリウッドのことばかり。もっとよく知ってもらうためには偉大な女性のことを取り上げようと思ったの」と企画のスタートを語った。教師向けと生徒向けに用途の異なるコンテンツを用意し,教育現場で積極的に活用してほしいと希望を述べていた。