レノボ・ジャパンのロードリック・ラピン(Roderick Lappin)社長
レノボ・ジャパンのロードリック・ラピン(Roderick Lappin)社長
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 2008年10月1日にレノボ・ジャパンの代表取締役社長に就任したロードリック・ラピン(Roderick Lappin)氏は、「顧客サービスのリーダーと呼ばれる企業を目指す」という経営方針を明らかにした。その上で「ノート・パソコンThinkPadが日本生まれの製品であることを再度強調しつつ、一般消費者向け低価格パソコンやサーバーなどレノボ・ジャパンにとっての新市場に参入していく」と述べた。(聞き手は谷島 宣之=日経コンピュータ

 ラピン社長は「どんな企業でも新しい経営者は新しいやり方をとるもの。早急にビジネスの作戦をまとめたい」と語り、その前提として「顧客志向を徹底する」と語った。「レノボは顧客サービスの能力を高めることに積極投資している。日本の顧客の要求は厳しいが、高機能・高品質の製品を揃え、サービス力をさらに強めることで、顧客の期待に応えていけると確信している」(ラピン社長)。

BTOシステムを稼働へ

 製品については、主力のThinkPadブランドを再度、日本に浸透させる努力をする。「ThinkPadはその誕生の時から今日に至るまで、日本の“ヤマト”(神奈川県大和市にある研究開発センター)がデザイン(設計)とエンジニアリングを手掛けている。レノボの経営陣はヤマトをレノボの最も重要な財産と考えてきた。ただ、ThinkPadが日本生まれで、今日でもデザインとエンジニアリングは日本で行われているという事実がやや薄れているのではないかと思う。改めて、日本の顧客にその事実をお伝えしていきたい」(ラピン社長)。

 さらに、日本市場の要求に応じて製品の品揃えを増やす。ラピン社長は「今、ネットブック(機能を限定した一般消費者向け低価格ミニノートPC)の需要が伸びており、レノボも製品を投入する。PCサーバーも出す」と述べた。これまでレノボ・ジャパンのビジネスは、企業向けのデスクトップ・パソコンとノート・パソコンが中心だった。レノボ本社は低価格のミニノート機「IdeaPad S10」を準備している(関連記事)。

 販売については、顧客が望む構成のパソコンを提供する、いわゆるBTO(ビルド・ツー・オーダー)の新システムの準備を進めており、まもなく稼働させる。顧客がWebから希望する構成情報を入力すれば、レノボが要求通りに組み上げて出荷する。これまでもWebから注文ができたが、製品を選択し、オプションの指定をする程度だった。BTO用Webシステムの稼働に先立って、レノボ社内で利用する基幹システムの刷新を8月から順次進めている。「一連の情報システムの整備は順調」(ラピン社長)という。

「金融危機を乗り切るにはイノベーション」

 ラピン社長に課題を問うと、「金融危機の影響により、日本のパソコン市場が軟化しかねないこと」を挙げた。ただし、「世界の経営者は全員、ビジネス戦略の見直しを余儀無くされている。危機を乗り切るために、ビジネスのイノベーションが生まれるはずだ。こうしたクリエイティブな活動を支えるために、企業は情報化投資を継続する」と見ており、そのために「レノボ自身もイノベーションに挑んでいく」とした。

 「社長交代の理由はレノボ・ジャパンの売り上げ不振」という見方(関連記事)については、「天野(総太郎・前社長)さんの退任は個人的な理由と聞いている。第2四半期(7~9月)の業績が悪かったから、ということではない」と否定した。「天野さんは12月末までアドバイザーとして留まるので、顧客やビジネスパートナーとのリレーションに関してしっかり引き継ぐ」(ラピン社長)。ラピン社長は1996年にデルへ入社、2007年2月からレノボ・シンガポールの副社長に就いていた。

 レノボ・ジャパンの売り上げや出荷金額に関しては次のようにコメントした。「レノボは各国現地法人の個別売り上げを公表していない。今後は、日本で伸びている一般消費者市場にも参入する。この市場は利益の確保が難しいが、サーバーも投入することで、利益のバランスをとっていきたい。日本市場において今後レノボが売り上げを伸ばせる機会は十分ある」。

 パソコンの価格低下が進み、各メーカーともに売り上げを増やすために苦労している。そうした中、ラピン社長は、消費者市場やサーバー市場への参入、BTOと顧客サービスの強化、ThinkPadのブランド再浸透といった施策で、売り上げを伸ばせると見込んでいる。

「3カ月後には日本語を話す」

 しかし、消費者向けパソコンもPCサーバーもBTOも、大手パソコン・メーカーはかねてより日本市場で実施済みであり、後発のレノボ・ジャパン、そしてラピン社長にとってかなりのチャレンジになる。ラピン社長は「日本の顧客、ビジネスパートナーの声を聞いて、ベストの策をとっていく」とし、「日本語の特訓を受け、3カ月後には日本語を話す」と宣言した。

 ラピン社長は日本に住んでビジネスをした経験が2度ある。「最初はIT企業ではなかったが、日本のホテルで働いた。その後、故郷のオーストラリアでコンピュータの販売を手掛け、デルのオーストラリア法人に入った。デルの日本法人に移り、日本で2年間勤務したことがある。今回、日本に戻ることができ、大変興奮している」(ラピン社長)。