インターネットに接続できる環境にいれば,いつでもどこでも自分のデスクトップ環境をWebブラウザ上に再現できるWebデスクトップ・サービス。日本では,フュージョン・ネットワークサービスが2006年5月から米スタートフォースのサービス「StartForce」をいち早く提供し,機能の強化を続けている。2007年4月には従来から提供しているワープロやインスタント・メッセンジャ,画像ビューワ,オーディオ・プレーヤに加え,表計算の機能も追加した(関連記事)。同社GOL事業本部マーケティング部企画グループの渡辺香プロジェクトマネージャーに,ユーザーの利用状況や企業向け戦略などを聞いた。

(聞き手は榊原 康=日経コミュニケーション



現在のユーザー数は。

フュージョン・ネットワークサービス GOL事業本部マーケティング部企画グループの渡辺プロジェクトマネージャー
フュージョン・ネットワークサービス GOL事業本部マーケティング部企画グループの渡辺プロジェクトマネージャー
 ユーザー数は公表できないが,数万規模になる。ワープロ「StartForce Writer」とインスタント・メッセージ「StartForce Messenger」の機能を追加したベータ版の提供(2006年11月)以降,ブログやニュース・サイトで紹介される機会が多くなり,毎日数十のペースでユーザーが増えている。2007年4月に表計算の機能を追加した直後は,増加ペースがさらに数倍増えた。

企業の利用は進んでいるのか。

 現状は個人ユーザーがオンライン・ストレージの目的で利用しているケースが多い。当然,この中には仕事に活用しているユーザーも含まれている。企業として導入したケースはまだないが,要望は受けている。要望が多いのは,アクセス権限の集中管理機能。社内の部門や役職に応じてアクセス権限を細かく分け,情報システム部門で集中管理できるようにしたいとする声が多い。あとは,ファイルのウイルス・チェック機能や操作ログ機能などの要望がある。こうしたニーズにも応えていきたいと考えている。

ワープロと表計算に続き,PowerPointのようなプレゼンテーション機能を提供する予定は。

 プレゼンテーション機能の提供は未定だ。米スタートフォースでは,アプリケーションをスクラッチで開発するよりも,API(application programming interface)を公開してパートナ企業に提供してもらう方針で進めている。3月30日にはAPIの日本語ドキュメントも公開した。日本でも現在,システム・インテグレータに声をかけているところだ。

どこを競合として見ているのか。

 Webデスクトップ・サービスでは,NTTコミュニケーションズとNTTレゾナントが2007年3月に試験提供を始めた「ウェブデスクトップ」がある(関連記事)。Webデスクトップ・サービスではないが,グーグルの「Google Apps Standard Edition」も機能面で競合すると考えている。いずれにせよ国内にはまだサービスが少なく,市場が立ち上がるのはこれからだろう。

 一方,米国では既に多くのサービスが登場しており,中にはオープンソース化されているものもある。ただ,彼らがどのようなビジネスモデルを描いているのか分からない。我々もビジネスモデルを完全に確立しているわけではなく,まだ収益ベースになっていない。現状はとにかく無償で公開し,コンセプトを広める段階にある。

今後の展開は。

 個人向けと法人向けの両方で有償サービスの提供を考えている。とはいえ,具体的な内容は決まっているわけではなく,現在,付加価値をどう打ち出していくかを検討しているところだ。Webデスクトップ上で提供するアプリケーションごとに課金する形態もあり得ると考えている。