ビジネスブレイン太田昭和
会計システム研究所 所長
中澤 進

 日本の会計基準の策定主体であるASBJ(企業会計基準委員会)は2013年8月から、「エンドースメントされたIFRS(日本版IFRS、J-IFRSなどとも呼ばれる)」の議論を進めている。

 エンドースメントされたIFRSは、金融庁は6月20日に公表した「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」の「IFRSの適用の方法」で示したもの。「個別基準を一つ一つ検討し、必要があれば一部基準を削除又は修正して採択する」エンドースメントの仕組みを導入するという内容である(関連記事:「IFRSへの対応のあり方に関する当面の方針」を読み解く(上)同(下))。

 同報告書では、エンドースメントのプロセスはASBJが担うとしていた。これを受け、ASBJは2013年7月10日に開催した第268回委員会において、エンドースメントされたIFRSの開発に関するロードマップ「IFRSのエンドースメント手続に関する計画の概要(案)」を公表した(関連記事:「J-IFRS」の検討は2014年秋をメド、企業会計基準委員会が作業計画案を提示)。

 ロードマップでは、エンドースメントする際の判断基準として、(1)会計基準に係る基本的な考え方、(2)実務上の困難さ(作成コストが便益に見合わない等)、(3)周辺制度との関連(各種業規制などに関連して適用が困難又は多大なコストを要することがないか)、などを掲げている。その上で、エンドースメントされたIFRSを開発するに当たり、「IASB が設定した個々の会計基準等について、修正することなしに採択可能か否かを、前項の判断基準にしたがって検討し、必要に応じて、削除又は修正して採択することになると考えられる」としている。

 ASBJ内に設置した「IFRSのエンドースメントに関する作業部会」はこの方針に沿って、IFRSと日本基準を比較することにより検討が必要な項目の候補を抽出する作業を始めた。8月28日の第1回会議で、今後の作業の進め方を示す(関連記事を参照)とともに、第1回目の議論を実施。9月12日に、2回目の議論を実施した。

 作業部会は「まずは幅広に検討する」という方針を採っており、多くの基準が対象になっていることが分かる。

 筆者は、こうしたASBJにおける検討範囲や方向性に関して、やや違和感を覚える。「エンドースメント」という言葉の響きと、今回、議論を進めていこうとしている内容との間にずれを感じるからである。さらに、エンドースメントされたIFRSという基準が今後、どのような位置づけとなっていくのかが不透明であるとも感じる。

 前置きがやや長くなったが、今回は「エンドースメント」という言葉の持つ意味と共に、今回、検討・開発されるエンドースメントされたIFRSについて考えてみたい。