ビジネスブレイン太田昭和
会計システム研究所 所長
中澤 進

 2013年6月19日、金融庁の企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議において、「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針(案)」が提示された。翌6月20日には、「(案)」が取れた形で公表された(報告書はこちらで入手できる)。同報告書により、約2年にわたって議論されてきた日本におけるIFRSへの対応について、一区切りがついたといえる。

 筆者は数年にわたり、継続的に企業会計審議会を傍聴してきた。今回と次回では、これまでの議論や各種資料を参照しつつ、報告書の意味するところを検証するとともに、これから日本が考えていくべきIFRSへの取り組み方を考えてみたい。

 報告書は大きく五つのパートで構成される。(1)はじめに、(2)IFRSへの対応のあり方に関する基本的な考え方、(3)IFRS任意適用要件の緩和、(4)IFRSの適用の方法、(5)単体開示の簡素化である。今回は(1)から(4)の途中までを見ていく。本文の太字部分は報告書からの引用である。

(1)はじめに
---「中間的論点整理」が出発点

 ここでは、これまでの経緯を述べている。

企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議では、2011年6月から約1年間にわたり審議を重ね、2012年7月、「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方についてのこれまでの議論(中間的論点整理)」を公表した。この中間的論点整理では、連単分離を前提に、IFRSの任意適用の積上げを図りつつ、IFRSの適用のあり方について、その目的や我が国の経済や制度などにもたらす影響を十分に勘案し、最もふさわしい対応を検討すべきである、とされたところである。

 今回の報告書の出発点がこの「中間的論点整理」にあることが分かる。論点整理では、(a)会計基準の国際的調和、(b)国際会計基準の適用、(c)わが国としての意見発信、(d)単体の取扱い、(e)中小企業等への対応、(f)任意適用、(g)原則主義への対応、という7項目にまとめている。