2013年前半を振り返り、今年後半の通信業界を占うために情報通信総合研究所の研究員と共に実施した座談会。前編(関連記事:ドコモツートップ戦略の功罪、Firefox OS、Tizenの行方は?)では、ドコモのツートップ戦略の功罪など今年前半の通信業界の動きを振り返った。後編となる今回は、携帯各社の次の一手など、今年後半の通信業界の注目点について議論した。

(司会、構成は堀越 功=日経コミュニケーション

スペシャル座談会(後編)

ここからは、2013年後半の注目すべき動きについて聞きたい。やはり気になるのがKDDIとソフトバンクモバイルに攻められているNTTドコモの次の一手だ。ドコモがiPhoneを扱うようになれば、ドコモから他社への流出が止まり、競争状況が一変するという指摘もある。

写真●情報通信総合研究所 主任研究員 中村邦明氏
写真●情報通信総合研究所 主任研究員 中村邦明氏
米国育ちのガジェット好き研究員。モバイルデバイスおよびモバイルコンテンツを中心に携帯電話市場の動向を幅広く調査研究している。
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中村:この点について実は先日、ある大学で話す機会があり、その場にいた大学生50人ほどに簡単に調査してみた。大学生約50人のうちiPhoneを持っている人が既に半分以上だったが、その上で「ドコモからiPhoneが出たら乗り換える人は?」と聞いてみた。結果は、ドコモに乗り換えるという人は1人もいなかった。その時に出た大学生の意見で目立ったのは、「ドコモに乗り換えると月額料金が高くなりそう」という答えだった。イメージとして「ドコモは高い」と思われている。

実はドコモは、Xiパケ・ホーダイダブルや各種割り引き施策を組み合わせると、他社に引けを取らない安い料金プランを出している。しかしドコモは日経コミュニケーション 2013年1月号の特集でも触れている通り、「プロモーションの極度の押しの弱さ」があり、安さが世間一般に伝わっていない。

岸田:実は携帯3社のプロモーションはすべて同じ広告代理店が担当している。聞くところでは、3社のプロモーションについて社内で凄い競争になっているという。もしドコモのプロモーションの押しの弱さが本当で、それが原因で利用者にメッセージが伝わっていないとしたら、それは代理店の力不足だとは言いにくい。

 仮にドコモがiPhoneを売ればどうなるのか。おそらくプラスもマイナスもある。ドコモからのiPhoneの登場を待っている人は、それなりに多いだろう。また他社契約の違約金をドコモが負担したり、MNPでのキャッシュバックが他社並みに設定されるのであれば、ソフトバンク、KDDIからドコモへそれなりの数が出て行くと想像できる。しかし、これは3社が同じ土俵に乗るに過ぎないため、その勢いがどの程度の期間続くかは不透明だ。

 NTTドコモの加藤社長は「米アップルとのコミットメントが、ドコモの携帯電話の総販売台数の約半分をiPhoneとする条件となると難しい。約2〜3割だったら可能性はある」といった趣旨の発言をしているが、その判断は正しいと思う。iPhone発売によって瞬間風速は出るかもしれないが、長期的なコミットメントをクリアするのは簡単ではないのではないか。それは国内メーカーを守るためというレベルではなく、そもそも頑張っても今やiPhoneは今までほどの勢いでは売れなくなってくるのではと感じる。すると、在庫を抱える世界になる。やはり台数のコミットメントが課題になる。