会社を始めとする組織は、歴史を重ねて規模が拡大するとともに様々な構成要素、例えば階層や部門が肥大化し、複雑化していきます。これによって活力がそがれていくのが人間の集団の営みとしての組織の後戻りのできない宿命です。今回は組織の肥大化・複雑化による弊害について考えてみましょう。

「自然に増えても自然には減らない」組織の宿命

 会社に潜んでいる「不可逆性」、つまり一方通行で後戻りができないという事象の典型例は、「規則やルールの増加」です。チェックリストの「17. 訳のわからない規則やルールが多数存在する」が該当します。

 先の「『組織化』の功罪、『個性的人材を求める』ことの矛盾」で述べた通り、会社はある程度のステップを経ると必ず日々のオペレーションを「組織化」していくことが求められます。したがって会社の中で何か従業員が「よからぬこと」をした場合、「個人が悪かった」では済まずに、必ず「組織的対応」を取ることになります。

 つまり「悪人も善人も」関係なく、すべての従業員に対してルールや規則が増えていくということです。これは増やすのは簡単でもほとんど減ることはありませんから、「ほんの一部の不届き者」のために大多数の従業員が割を食うことになります。これも不可逆的に進行し、組織の活力を徐々にそいでいきます。

 この他、肥大化・複雑化していくものの代表例は「組織構造」です。これには大きく縦方向と横方向の2つがあります。

 まず「縦方向」とは組織の階層です。従業員の増加にともなって管理職のカバーする人員が増えていきますから、ある程度を越えると階層が増えていくことになり、これに要する管理コストも加速度的に増大します。

 併せて「横方向」の複雑化は専門分化による部門や担当の複雑化です。会社が大きくなって一人前になっていけばいくほど業務内容の専門性も高くなるため、スキルセットも「何でも屋」から、「専門家」としての高度な専門性が求められるようになります。それに伴って「横方向」の肥大化、複雑化も一方通行で進行していきます。