以前の記事で取り上げた「Connected Standby」も、Windows 8の新機能の中で注目すべきものだ。今のところ、Clover Trailというコードネームで開発されたインテルの最新Atom搭載PCか、Windows RT機でしか使えない。だが、インテルのメインプロセッサであるCore iシリーズが、コードネーム「Haswell」と呼ばれるものに世代交代する2013年以降は、PC全般に幅広く実装されるようになるだろう(関連記事1関連記事2)。

 Connected Standbyは、早い話がPCのスリープ中にも通信を維持した状態でいられるというものだ。ただ、その恩恵を受けることができるのは新しいModern UI対応のアプリ、いわゆるストアアプリだけだ。デスクトップアプリについてはこれまでと同様、完全に停止した状態になる。

 実は、ストアアプリも本当は停止しているのだが、必要な通信をOSに預けておくことができる仕組みになっている。そして、OSがもっとも効率的になるようなタイミングで、これらの通信をアプリの代替として実行する。こうした仕組みによって、接続を維持したまま30日間スリープ可能といった離れ業が可能になるわけだ。

端末の常時監視も可能に

写真●Connected Standby対応のClover Trailを搭載したThinkPad Tablet 2
写真●Connected Standby対応のClover Trailを搭載したThinkPad Tablet 2
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 Connected Standbyの使い道については、これからいろいろなソリューションが現れるだろう。注目すべきは、スリープ時にもデータをプルできるのみならず、リモートからプッシュできるという点だ。

 企業の管理者が、この特性を利用すれば、その時点で管理下にあるPCがどのような状態にあるかを常に把握できるようになるだろう。場合によってはGPSなどを使い、場所の特定もできるかもしれない。プライバシーの問題から実際にできるかどうかは別問題だが、今までよりも管理しやすくなるのは企業の管理者にとって朗報だ。

 とはいえ、恩恵を受けられるのはストアアプリのみという課題もある。ということは、さまざまな管理のためのユーティリティは、来たるべきHaswellの時代に備え、ストアアプリとして用意しておいた方がいいということだ。

 残念ながら、今のストアを見回しても、こうした管理のためのMicrosoft謹製ユーティリティは、まず見当たらない。同社には、まず、ここを充実することを求めたいものだ。

 ただし、OSが常時接続維持の機能をサポートしたとしても、物理的に実機が単独で通信できなければ意味がない。外部への接続がWiFiのみというのでは、せっかくのConnected Standbyも、その力を十二分に発揮できない。こうしたことから、企業で使うPCは、多少コストがかかってもWANをサポートすることが必須となっていく可能性もある。これはこれで喜ばしいことではある。

山田 祥平(やまだ しょうへい)
フリーランスライター
1980年代、NEC PC-9800シリーズ全盛のころからパーソナルコンピューティング関連について積極的に各紙誌に寄稿。Twitterアカウントは @syohei