前々回前回と、2回続けてソーシャルCRMに関して、その実践にあたって必要な考え方などを解説してきた。今回は実践の際に役立つ考え方についていくつかまとめて、このテーマについてはいったん締めよう。

最大のポイントはどのソーシャルメディアを活用するか

 一言でソーシャルCRMと言っても、その実践のためのアプローチには、様々な方法がある。特に、どのソーシャルメディアを活用していくのかは、その最たるポイントだろう。

 ここでまず意識しておきたいのは、決して「自分たちが都合のよいチャネルを使う」という観点で、活用するソーシャルメディアを決定づけないということである。当たり前だが、顧客がどのソーシャルメディアをよく用いているのか、そしてどのソーシャルメディアを用いることで情報の訴求および関係性の構築がスムースにいくのかを、実践前にきちんと分析して考えておく必要がある。そのためには、実践に本格的に乗り出していく前に、これらの情報を詳細に収集し、かつ分析していくということが不可欠になってくる。

 もちろん、顧客が使用するソーシャルメディアは、必ずしも一つだけとは限らないだろう。実際、自分たちがユーザーとして考えると、程度の差はあれ、ほとんどの人がTwitterやFacebook、あるいはミクシィ、その他のソーシャルメディアを何らかの形で利用しているはずだ。ただ、人によっては、それぞれのソーシャルメディアの使い方、そして目的なども変わってくるだろう。アカウントを持っているソーシャルメディアすべてを、同じように使ってはいないはずだ。

 顧客が、どのソーシャルメディアをよく用いているのか、そしてどのソーシャルメディアを用いることで自分たちのソーシャルCRM戦略が上手く機能するか、をきちんと分析するためには、ここまで詳細に情報を集めた上で、そのインサイトを収集しなくてはならない。顧客が頻繁に、かつ高い密度で使用しているソーシャルメディアをきちんと洗い出した上で、そこで繰り広げられるコミュニケーションの内容にいたるまで的確に把握することで、自分たちがどのソーシャルメディアを用いてソーシャルCRM戦略を展開していくか、というところが見えてくるし、今後の打ち手も非常に洗練されたものとなってくるのだ。

 さて、上記の分析を基に、十分機能するであろうソーシャルメディアをある程度ピックアップした後で、実際にソーシャルCRM戦略を走らせていくことになる。だが、もちろん前述したように、展開させるソーシャルメディアは必ずしも一つとは限らない。当然、複数のソーシャルメディアを活用した展開をすることが多いが、その際には必ず優先順位を設けておくことが重要となる。