以前、2回に渡ってB2Bマーケティングにおけるソーシャルメディアの活用の方法が変わってきているということについて書いた(該当記事1該当記事2)。今回は、このテーマをもう少しだけ深く掘り下げてみよう。

 B2Bマーケティングにおいて、一部の企業では、ソーシャルメディアの位置付けや活用の仕方に変化が見られている。これまでソーシャルメディアを、単に「自分たちの情報を幅広く伝えていくためのツール」、あるいは「マスメディアを代替するもの」として考えていたが変化してきているのだ。

 彼らはソーシャルメディアを、むしろCRMツールとして活用していくことを真剣に考えている。日本でも「ソーシャルCRM」という言葉で語られ始めている。海外で現在実践されつつあるやり方を、ここで見ていこう。

「はじめの一歩」を踏み出す大事な6つのポイント

 海外のマーケティング担当者がソーシャルメディアをCRM活動に組み込んでいく際に重要だと考えているポイント、言い換えれば「はじめの一歩」を踏み出していくために大事な点が6つほどある。それぞれ簡単に挙げると以下のようになる。

  1. 顧客の中に、もっと深く入り込む:顧客が実際に何を求めているかを、より深く探りだす。これが何よりも重要な点だということを彼らは強く認識している。そのためにソーシャルメディアも活用しながら、顧客が自分たちに対して具体的に何を求めているのかを絶えず導き出そうとしている。その上で、顧客と自分たちとの間における“良好な関係”とは、そもそもどのようなものなのかという、いわば理想的な形をあらかじめ定義していくことからスタートする。
  2. 顧客にフォーカスした戦略を策定していく:顧客が求めるもの、そして顧客と自分たちの関係における理想像が組めたら、次にそれを実現していくような戦略を策定していく。ここで重要なのは、自分たちが“現実的にできる戦略”であるということだ。自分たちが現実的に取れる戦略と顧客が求めるものを最大限にマッチさせられるように考えていく必要がある。
  3. マーケティングの全体戦略に対し適切な形でプログラムを組み込む:これは上述の2と密接に関係してくるが、当然CRMプログラムだけがひとり歩きしてしまうようなことになってはいけない。あくまでもマーケティングの全体戦略の中できちんと機能するような形でプログラムを組み込んでいく必要がある(こういった点を含めて“現実的にできる戦略”を考えていく必要がある)。
  4. 自分たちの現状の業務プロセスについてアセスメントを行う:非常に見落とされがちだが、実際にソーシャルメディアを活用したCRMプログラムを考えていくにあたって非常に重要となる部分だ。現状の自分たちの業務プロセスのアセスメントをきちんと評価した上で、はたして現状のプロセスについて、ソーシャルメディアを活用したCRMプログラムを走らせるために適しているものかどうかを改めて検討する必要がある。場合によっては業務プロセスを変えていくということも視野に入れてることが求められるだろう。
  5. 適切なツールを用意する:CRMプログラムにソーシャルメディアを活用するだけではなく、ソーシャルメディアそのものを、もっとビジネスに有効的に活用していくために、もはや必ず意識しておかなくてはならないポイントとなってきている。これまでソーシャルメディア、もといデジタルの活用そのものが“予算がないときのための逃げ道”として位置付けられていたケースも決して少なくなかった。だが、その意識では、これから先のソーシャルメディア活用、ひいてはデジタルの活用自体、大きく遅れを取っていくことになるだろう。明確なゴールを定め、そのための戦略を実行ベースに落とし込んでいくために適切なツールを用いることは、少なくとも海外では、半ば当然のものとなってきている。きちんと投資をしない限り、得られるリターンも相応のものとなってしまうということは、デジタルの世界であっても変わらない。
  6. 企業文化を変える気持ちで取り組む:CRMプログラムだけではなく、そもそもソーシャルメディアをビジネス方面に活用していくこと自体、いまだ未知の領域であり、その活用に新しい概念や方法論が求められる企業は少なくない。こういう状況でCRMプログラムにソーシャルメディアを組み込んでいくといくのであれば、当然企業文化を変えていくくらいの気持ちで取り組まないと、決して成功はしないだろう。これは、上記の5つのポイントよりも重要だ。はじめの一歩を踏み出していくのであれば、まず、この意識をきちんと持っていなくてはならない。

企業文化を変える気持ちで取り組むことが最も重要

 今回は、B2Bマーケティング、特にCRMプログラムにおけるソーシャルメディアの活用にあたって、そのはじめの一歩となる考え方を並べてみた。現在こういったプログラムを動かし始めている企業は、少なからずこの意識を持った形でスタートさせている。次回は、はじめの一歩に続くものとして、いわば「二歩目」で考えなくてはいけない点について述べてみよう。

熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)
リーバイ・ストラウス ジャパン デジタルマーケティングマネージャー
熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)1974年生まれ。プロミュージシャンからエンジニア、プロダクトマネージャー、オンライン媒体編集長などを経て、マイクロソフトに入社。企業サイト運営とソーシャルメディアマーケティング戦略をリードする。その後PR代理店バーソン・マーステラでリードデジタルストラテジストを務め、2011年12月よりリーバイ・ストラウス ジャパンにてデジタルマーケティングマネージャーとなる。