前回は、「ソーシャルCRM」を考えるにあたって、その「はじめの一歩」について、6つのポイントをまとめた。述べた。今回は二歩目と歩を進めていくために、重要なことについて考えていきたい。実際にソーシャルCRMの世界に足を踏み込んでいく前に、改めて検討していきたい5つのポイントを挙げていこう。

 この5つのポイントは、自分自身に対して問いかけやすいように、今回はあえて疑問文の形式にしている。文章としてまとめて並べていくと当たり前のことという印象が強くなるのだが、実際にビジネスの現場で施策として推進していく際には、いずれも意外と見落とされがちになってしまう点ばかりだと思われる。ぜひ、再確認しておきたい。

  1. あなたの顧客/パートナー企業/競合企業はソーシャルメディアを使っているか?:おそらく、この質問に対して“NO”と答えるようなケースは、現在ではかなり少なくなっているだろう。だが、あえて確認しておきたい。なぜなら、自分たちの顧客/パートナー企業/競合企業がソーシャルメディアを、どの程度利用しているかをきちんと把握しておくことで、自分たちがこれから始めようとしているソーシャルCRM活動のビジネス上のプライオリティ、そして予算やリソース配分などが妥当かどうかを改めて確認することにつながるからだ。投資が本当に適切なものかを今一度きちんと考えておこう。
  2. あなたが使用しているCRM活動のプラットフォーム/ツール/プロセスがソーシャルCRMに対応できるよう準備されているか?:これは前回の記事で「業務プロセスのアセスメント」および「適切なツールの選択」が非常に重要であると述べたことに関連したものだ。自分たちが使用しているCRM活動のプラットフォーム/ツール/プロセスが、ソーシャルCRMに対してきちんと対応できていなければ、実践する戦略や施策が効果を十分に発揮しないものになるどころか、かえって混乱を招くことになってしまう。特にCRM活動にあたって、たとえばオペレーションなどにおいて部門間をまたぐようなプロセスなどが存在する場合、非常に調整が困難になることが予想される。このため、あらかじめ綿密に調整をしておくことが求められる。また、自社が活用しているツールに、どれだけのフレキシビリティがあるかをあらかじめ把握しておくことも非常に重要だ。
  3. 企業内に「共有」または「コラボレーション」を行う文化があるか?:これもフォーム/ツール/プロセスがソーシャルCRMに対応できるよう準備されているか?:これは前回の記事で「企業文化を変えるくらいの気持ちで取り組む」という話として触れたのものである。ソーシャルCRMを実践していくにあたって、ある意味必須だと言ってもいいのが、この「共有」や「コラボレーション」である。組織内に、こういった文化が存在している方が、ソーシャルCRMは機能しやすいということは、事前にきちんと理解しておいた方がよいだろう。
  4. そのソーシャルCRM戦略は組織のビジネスゴールにきちんと沿っているものか?:ソーシャルCRM戦略を動かしていくにあたって、一番多く見られる失敗が、施策自体が組織のビジネスゴールに沿っていないまま進み、最終的に戦略自体が宙に浮いたまま終わってしまうというものだ。これはソーシャルCRM自体を「手段の目的化」として進めてしまったがために起こることと言ってもよいだろう。そうならないためにも、まず自分たちのビジネスゴールをきちんと明確化して関係者間でコンセンサスをとっておくこと。そして、そのビジネスゴールに対して、ソーシャルCRMを、どのように活用させるかを具体的に決定させることが必須になる。さらに、そのソーシャルCRMのパフォーマンスによって導き出される数字が、ビジネスゴール全体において、どの部分に、どうやって貢献しているかを見極められるようなKPIの設定も合わせて行なっておきたい。
  5. 自社内にソーシャルメディアを活用している人材、あるいは活用しようというコンセンサスはあるか?:いろいろなことを述べたが、やはり最後にもっとも問われてくる点は、これに尽きる。そもそも自分たちが、組織としてきちんとソーシャルメディアを活用しようとしているのか。まずは、そのコンセンサスを十分にとっておくことが不可欠になる。その上で自社内においてソーシャルメディアを既にヘヴィに活用している人材を有しているのであれば、その人材がきちんと機能するように組織や配置を含めて検討することが必要になる。数年前まではあまり多くはなかったが、現在は、決してそうでもないはずだ。一番役に立つリソースは、自分たちのすぐそばにいる可能性が高いということをまずは認識しておいた方がよい。
  6.  さて次回は、続く「三歩目」について引き続き考えてみたい。実際にソーシャルメディアを自社のCRMプログラムに活用していくという戦略を立て、具体的に進めていく方向性が見えたという状況を前提にした上で、次にどのような一歩を進めていけばよいかのヒントを考察していこう。

    熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)
    リーバイ・ストラウス ジャパン デジタルマーケティングマネージャー
    熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)1974年生まれ。プロミュージシャンからエンジニア、プロダクトマネージャー、オンライン媒体編集長などを経て、マイクロソフトに入社。企業サイト運営とソーシャルメディアマーケティング戦略をリードする。その後PR代理店バーソン・マーステラでリードデジタルストラテジストを務め、2011年12月よりリーバイ・ストラウス ジャパンにてデジタルマーケティングマネージャーとなる。