IT業界でプロとして活躍するには何が必要か。ダメな“システム屋”にならないためにはどうするべきか。“システム屋”歴30年を自任する筆者が経験者の立場から、ダメな“システム屋”の行動様式を辛口で指摘しつつ、そこからの脱却法を分かりやすく解説する。(毎週月曜日更新、編集:日経情報ストラテジー

ITベンダー社内での会話
ダメな“システム屋”の会話 後輩“システム屋” 「先輩、ちょっといいですか?」
ダメな先輩“システム屋” 「うん、何?」
後輩 「2年前の新規事業アイデアコンテストのこと、覚えていますか?」
ダメ 「おう、オレは毎年、新規事業のアイデアを出しているからな」
若手 「2年前の先輩のアイデアって、寄付や募金を受け付けるウェブサイトの運営でしたよね?」
ダメ 「そうだったかな?何しろ、毎年出しているからな」
若手 「もし今、事業化していたら、東日本大震災の義援金を広く集めるのに役立っていたんじゃないでしょうか。銀行などの既存企業がやるよりもいいサービスができたかもしれません」
ダメ 「ん、そうかな?」
若手 「集めるだけじゃなくて、義援金の使途や効果をサイトで示せるじゃないですか。いくら集まっているかもすぐに集計できますし」
ダメ 「おう、そうかもしれないな」
若手 「あれを今やっていたら、すごく社会に役に立ったと思うんですよね」
ダメ 「あれは確か、コンテストで予選落ちしたかな。本選に出ないと参加賞すらもらえないからな」
若手 「惜しかったですね、社会インフラになっていたはずですよ」
ダメ 「惜しかったなあ、あと1票入れば本選に参加できて、参加賞もらえたはずなんだよ」
若手 「・・・(なんか、話がかみ合わないな。『今ならこういうこともできるな』など前向きな話が聞けると思ったのに)・・・」

ダメな理由:やらなかった後悔に鈍感

 前回(第32回)は優秀な部下ほど損をするという、企業組織で起こりがちな奇妙な現象を指摘しました。今回は組織ではなく個人へと視点を変えて、個人の“後悔”に焦点を当てたいと思います。

 “後悔”は大きく2種類に分けられます。「やってしまったことへの後悔」と「やらなかったことへの後悔」です。

 やってしまったことへの後悔は誰にでもあると思いますが、やらなかったことへの後悔は、それに比べると少ないのではないでしょうか。

 例えば年に100回飲酒する人がいるとすれば、そのなかで何回かは「飲まなければよかった」と後悔するかもしれません。しかしこの人が1年間勉強しなかったことに対して「もっと勉強すればよかった」とすぐに後悔するとは考えにくいと思います(長年過ぎてから後悔する人はいるかもしれませんが)。

 やってしまったことは記憶に残りますし、場合によっては証拠として残ることもあります。自分は忘れたくても、周囲がそれを許さない場合だってあります。だから、やってしまったことへの後悔は、誰もが身に覚えがあるものだと思います。

 一方で、やらなかったことは、自分さえ気にしなければ簡単に忘れることができます。