IT業界でプロとして活躍するには何が必要か。ダメな“システム屋”にならないためにはどうするべきか。“システム屋”歴30年を自任する筆者が経験者の立場から、ダメな“システム屋”の行動様式を辛口で指摘しつつ、そこからの脱却法を分かりやすく解説する。(毎週月曜日更新、編集:日経情報ストラテジー

ITベンダー社内にて、人事に関するひそひそ話
ダメな“システム屋”の会話 “システム屋”A 「おい聞いたか?X先輩、異動だってなあ」
“システム屋”B 「ああ、びっくりしたよ。だって、次か、次の次の部長候補じゃない?」
A 「そうだよ。X先輩には期待していたんだけどなあ」
B 「今回の異動、ちょっと変じゃないか?」
A 「というと・・・」
B 「だって、会社としても異動先で幹部候補にするという感じではないし、X先輩本人がキャリアアップを希望したとしても、あそこには行かないだろう」
A 「うん、確かにそうだな」
B 「X先輩の上司に当たるY部長の保身が目的ではないかというのが、もっぱらの噂だよ」
A 「ははあ、確かにY部長はひどい人だよなあ。実力はあるのかもしれないけど、部下に対して威圧的だし、意見を聞かないし。今すぐにX先輩が部長になってもらった方がいいぐらいだよ」
B 「別の先輩から聞いたんだけど、前にも似たようなことがあったらしい」
A 「え、どういうこと?」
B 「自分の座を脅かす優秀な人材を放出し、そのうえで周りに何と言っているかというと・・・」
A 「おい、Y部長が隣の部長と話しながらこっちに歩いて来るぞ。敬礼!」
Y部長 「いやー、Xくんは私が育てた人材だからな。人を育てて会社のために供給しているからなあ。私のことを、会社はもっと評価してほしいものだよ」
A 「・・・やれやれ、通り過ぎた・・・」
B 「いまの聞いただろう。『X先輩を育てた』って、どういうこと?」
A 「いや、びっくりだね。我々から見るとX先輩の邪魔をしていたようにも思えたけどね」
B 「古今東西、権力者は自分の地位を脅かす優秀な人材は遠ざけるってことなのかな・・・」

ダメな理由:人事部も見抜けない巧妙な保身術

 前回(第31回)は“システム屋”の新入社員の前向きな志の重要性について触れました。うって変わって、今回はちょっと生臭い人事の話をします。

 “システム屋”が身を置くITの世界は技術進歩が早く、最新の技術動向についていくのは大変です。そのうえ、情報システムの使い方にも次々と新しいものが出てきます。

 変化が激しい世界では、人間は何らかの観点で自分を安定させたいと考えるものかもしれません。その代表が管理職などのポストです。一度つかんだポストには、長く留まりたいと思うのでしょうか。他部門への異動をことのほか嫌がったり、自分のポストを脅かす優秀な人材がいれば早々に芽を摘もうとしたりするダメな“システム屋”を、私は数多く見てきました。

 部長などの管理職、すなわち人事権を持つ権力者が、職権を使って、自分のポストを脅かす優秀な人材を飛ばしたり、外したりするようなことが起きるとしたら大問題です。他部門や人事部門からはこうした内情は見えませんから、部長が巧みに説明すれば、こうした人事異動は比較的容易に実現してしまいます。

 そして、この人は部長のポストにますます長く居座ることになります。