IT業界でプロとして活躍するには何が必要か。ダメな“システム屋”にならないためにはどうするべきか。“システム屋”歴30年を自任する筆者が経験者の立場から、ダメな“システム屋”の行動様式を辛口で指摘しつつ、そこからの脱却法を分かりやすく解説する。(毎週月曜日更新、編集:日経情報ストラテジー)

若手男性“システム屋” 「はい、興味あります」
先輩 「女性向けと男性向けがあるけど、女性向けからやってみようか」
若手男性 「はい、よろしくお願いします、先輩」
先輩 「男性の魅力の5大要素を、仮に、頭脳、体力、経済力、ルックス、面白さの5つとする」
若手男性 「ふむふむ」
先輩 「さて、この中で1つだけ捨ててもらうとしたらどれを選ぶかな?」
若手女性“システム屋” 「1つだけ捨てるのですか?優先順位を決めるだけではだめですか?」
先輩 「そう、捨ててもらう。これがこの究極問題の肝だよ」
若手男性 「しかし、例えば頭脳を捨てたとして、頭は悪いけど経済力があるなんて人は、実際にいるのでしょうか?」
先輩 「例えば、プロスポーツ選手とかにいるかもしれないよね」
若手男性 「じゃあ逆に、頭脳や体力があるのに経済力がないなんて人は?」
先輩 「自分の才能を勘違いして無理な道を進んでいる人がいるかもしれない」
若手男性 「私なんか『面白さ』以外を全部捨ててもらわないとダメじゃないですか(笑)」
先輩 「ちょっと君は黙っていてもらえるかな。これは捨てるものを決められるかどうかという苦渋の決断を迫る心理ゲームなんだよ」
若手男性 「はい、すいません」
先輩 「男性向けは後でやるとして、自分の成長の方向や、企業の成長の方向についても、捨てたり後回しにしたりするものを決められるかどうかは、結構難しいことだと思うよ」
若手女性 「捨てるものを決められないというのは、優先するものも決められないという意味なのでしょうか?」
先輩 「そうだね、よく分かっているじゃないか。時間も資源も有限だから、捨てるものを決めないと、実は優先するものも決めていないことになるんだよ」
ダメな理由:捨てられなければ、中途半端に終わる
前回(第27回)は「黙らせる優秀さ」では“システム屋”は二流止まりで終わると指摘しました。周囲を黙らせる優秀さを持つ“システム屋”は45才ぐらいをピークに、輝きを失います。
しかしピークを迎えられる人はまだいい方です。今回指摘する「捨てられない人」は、成長スピード自体が遅すぎて、社会人として働く間にピークを迎えることがないかもしれません。
例えば、コンサルタントになりたい、プロジェクトマネジャーになりたい、金融分野の専門家になりたい、といった希望をどれも捨てられないという人はいないでしょうか。最終的には多くの能力を持ち、多方面で活躍する“システム屋”へと成長できる可能性は、確かにあります。しかしながら、成長過程のある時点で、どれも捨てられず、優先順位も付けられず、中途半端な実力しか身につかない人が、“システム屋”の中に多く存在します。