IT業界でプロとして活躍するには何が必要か。ダメな“システム屋”にならないためにはどうするべきか。“システム屋”歴30年を自任する筆者が経験者の立場から、ダメな“システム屋”の行動様式を辛口で指摘しつつ、そこからの脱却法を分かりやすく解説する。(毎週月曜日更新、編集:日経情報ストラテジー

若手“システム屋”2人がオフィスでひそひそ話
ダメな“システム屋”の会話 若手“システム屋”A 「やっぱり、X先輩が話し出すとすごいね」
若手“システム屋”B 「ああ。周囲が黙ってしまうからね」
若手A 「米国勤務帰りの迫力なのかな。誰もついて行けないよね」
若手B 「どういうわけか、知らない英単語とか、米国企業の人名まで出てくるからね」
若手A 「でもさあ、X先輩がいくらたくさん話しても、そこから新しい気づきが生まれるとか、ブレーンストーミングに役立つとか、そういうことはないよね」
若手B 「自分もそう思った。結局、X先輩は自分の“演説”に終始しているでしょ?」
若手A 「そうなんだよね。そしてその演説は・・・」
若手B 「出て来る話がいつも同じ」
若手A 「今日のミーティングでは、Y先輩が話そうとしていたじゃない?」
若手B 「そうそう、割と面白い切り口だと期待したんだけど」
若手A 「ところがX先輩が遮って、結局Yさんは黙らされちゃう」
若手B 「こんなことなら、ミーティングなんかやらずに、最初からX先輩が1人でやればいいんじゃない?」
若手A 「やっぱりそう思うよね!」

ダメな理由:周囲を黙らせては、学びはない

 前回(第26回)は提案書の書き方について述べました。今回は人と接する時の“システム屋”の態度について考えたいと思います。

 優秀な人は大きく2種類に分けられます。周囲を黙らせるタイプと、周囲に話させるタイプです。どちらがより優秀でしょうか。そもそも、比較は可能なのでしょうか?

 私自身が若手の“システム屋”だった頃、周囲を黙らせるタイプの優秀な先輩がいました。黙らせるタイプと呼ぶよりも、黙らせるほど高いレベルの逸材だったというべきかもしれません。豊富な知識と自身満々な態度が相まって、彼が話し出すと、もう誰も口を挟むことができません。口を挟もうとしても、すぐに彼に遮られてしまい、話し手は引っ込んでしまいます。

 黙らせるタイプの優秀な人はどの世界にもいると思いますが、“システム屋”の世界に限って考えてみましょう。

 技術面はどうでしょうか。技術に関しては黙らせるタイプの優秀な人は存在し得ません。“システム屋”の世界では、新技術が次々に生み出されます。それら全て知っていたり、経験したりしている「スーパーマン(スーパーウーマン)」など、いるはずがありません。

 どんなに優秀な技術者であっても、未経験の技術を持つ人に出会えば、その人の話をよく聞こうとするものです。逆に、人の話を聞いて理解しようという意識がない技術者は、決して優秀な人にはなれません。

 だから、“システム屋”の世界では、周囲を黙らせるタイプの人は、ノウハウやプロジェクトマネジメントなどの分野でしか生存できません。これらの分野においては、他の人の経験を軽視して自分の経験だけを重視し、豊富な知識を織り交ぜながら他人の出番をつぶすという行動パターンでも、何とか仕事が成り立つ場合があります。