有限責任監査法人トーマツ
エンタープライズリスクサービス部 シニアマネジャー
鈴木 徹也

 前々回から、IFRS(国際会計基準)が決算・財務報告プロセスに与える影響を取り上げている。前々回(決算・財務報告プロセスに与える影響(1)見積もり・判断)は見積もり・判断が必要となる分野を中心に説明し、前回(決算・財務報告プロセスに与える影響(2)決算早期化)は決算早期化の意義や決算早期化がもたらす各種影響について見てきた。

 今回も前回に続いて、決算早期化を取り上げる。プロジェクトの進め方をはじめとする、実際の対処方法を説明していく。

1. 現状分析

 決算早期化プロジェクトは、どのように遂行していけばよいのであろうか。最初のステップは現状分析である。現状の決算・財務報告プロセスについて、「それぞれの作業に要する時間を短縮できるか」という観点から、より詳細な分析が必要となる。これまで内部統制報告制度の対象としていなかった会社で決算早期化を実施する場合は、決算・財務報告プロセスの現状を新たに分析しなければならない。

 上場会社をはじめとする多くの企業では、内部統制報告制度への対応時に、決算・財務報告プロセスの現状をある程度把握していると思われる。ただ、決算早期化は決算日から親会社への連結資料の提出に至る一連の作業を時間的に短縮する作業である。すでに現状を把握していたとしても、現状のプロセスを見直すことが前提となる。

 現状分析におけるもう一つの重要な作業は、決算早期化の対象となる子会社の対応能力を見極めておくことである。子会社側の経理体制や人材、システムのレベルはまちまちであるケースが多い。自律的に課題に取り組み、決算早期化を自ら実現できる子会社がある一方で、親会社などが相当支援しないと、決算早期化への対応が難しいと思われる子会社もあると予想される。現状分析の段階で、どの子会社が子会社手厚いサポートが必要かを親会社として把握しておくことが必要であろう。

2. 目標設定

 現状分析に続いて、決算早期化の目標を設定する。子会社側にとっての目標は、連結パッケージの親会社への提出である。実務としては、連結パッケージの親会社への提出日から逆算して、各決算作業の期日(締め切り)を決めていくこととなる。

 この段階で、目標作業期日と現状の作業日との差異を計算する。計算により得られた結果が、決算早期化で短縮すべき期間となる。