セキュリティ分野で注目のITキーワードを聞いたITpro読者調査で、断トツの注目キーワードとなったのは「無償ウイルス対策ソフト」。企業利用に制限があるとはいえ、これまで無防備だったユーザーのセキュリティ強度を底上げする効果がITプロフェッショナルの期待を集めたのだろう。

表1●2010年に注目したいセキュリティ分野のITキーワード
表1●2010年に注目したいセキュリティ分野のITキーワード(有効回答数=2803)
(有効回答数=2803)
表2●2009年に注目したセキュリティ分野のITキーワード
表2●2009年に注目したセキュリティ分野のITキーワード(有効回答数=2803)
(有効回答数=2803)

 「注目したい」「注目した」の双方で1位と、今回調査では無償ウイルス対策ソフトが断トツの注目キーワードとなった。マイクロソフトが2009年9月に提供を始めた「Microsoft Security Essentials」がその牽引役と見られる。家庭やSOHOでのセキュリティ強度底上げを狙った製品で、SOHO以外での企業利用はライセンス違反になる。マイクロソフト以外にも、2009年12月に独Aviraが個人向け無償ウイルス対策ソフトを日本語化するなど、コンシューマ市場で無償化の動きが活発化している。前回の調査で1位のUSBウイルス/USBワームで「注目した」の919票が「注目したい」では552票と落ち込んだのに対し、無償ウイルス対策ソフトは「注目した」が1051票、「注目したい」が885票と票数の差が少ない。個人向け製品無償化の流れが他社製品、さらには法人市場への波及するのではないかという期待が見て取れる。

 2位には前回の調査に続き「暗号の2010年問題」がランクイン。アルゴリズムのぜい弱性や暗号鍵長の不足などで解読が容易になる「鍵長1024ビットのRSA(*1)」、ハッシュ関数の「SHA-1」といった暗号技術を、2010年末までに米国立標準技術研究所(NIST)が政府標準から外すことから、暗号製品の更新や電子署名のし直しなどの作業が必要になる場面が出てくる。PCサーバーの高性能化やクラウド・コンピューティング・サービスの大規模化をふまえると納得の注目度と言えるだろう。

*1 調査終了後の2010年1月8日にNTT情報流通プラットフォーム研究所が発表した公開鍵暗号の安全性予測に関する検証では、鍵長1024ビットRSAが現在のコンピューティング・リソースをもってしても実用的な時間では解読できないことが分かっている。

USBウイルス/ワームは意識せず注意する存在に

 前回の調査で「注目したい」「注目した」の双方で1位だった「USBウイルス/USBワーム」は、「2009年に注目した」で2位、「2010年に注目したい」で4位と、注目度は下降する傾向にある。もっとも感染報告数は、依然としてトップ。もはや意識して注意すべき対象ではなく、最大の侵入経路として無意識に気をつける存在ということなのだろう。

 新顔は6位に入った「偽ウイルス対策ソフト」。ウイルス駆除をエサに偽ウイルス対策ソフトを購入させようとする攻撃で、もっともらしい外観でユーザーを騙そうと躍起だ。ユーザー・インタフェースが日本語化されたものは今のところ確認されていないが、著名なウイルス対策ソフトの外観で日本語UI、日本語課金サイトを用意する攻撃が現れても不思議はない。

 2010年の注目キーワードで5位に入った検疫ネットワークは、2009年に注目したキーワードとしてはランク外となっている。これは前回の調査でも4位、圏外と同じ傾向。ネットワーク機器の更新を伴うことが多い検疫ネットワークについて「今年こそは」と導入を検討するものの、日々のセキュリティ対策やコスト削減要求から結局は先送りする、といった企業動向の現れかもしれない。2010年に業務利用が本格化しそうなOpenIDも同様で、今のところ新語としてウォッチはしても、日々の業務の中で真剣に検討する段階に至っていないようだ。