ファシリテーション・テクニックを極める当研究所。現場で培ってきた数々のテクニックやノウハウの中から、即効性があるツールを紹介しています。第23回と第24回は、「Have Fun!」です。本研究所ではこれまで、プロジェクトを円滑に進めるための具体的な手法やツールを紹介してきました。今回は、気持ち、心構えといった“テイスト”がテーマです。どんな優れた手法やツールも、活用する人に「心」がなければ活きてきません。

「仕事を楽しむ」とはどういうことか?

 「好きなことばかりやっていれば、人生はなんて楽しいんだ」――。なんて夢想にふける瞬間は、だれにでもあるはずです。しかし、次の瞬間には現実に引き戻され、目の前に積まれた資料の山や未読メールに取り組む羽目になっていませんか。あぁ、なんてつらいんだろう・・・。

 当研究所のメンバーたちは、仕事に取り掛かるとき、あるいはプロジェクトに取り掛かるとき、「Have Fun!」という言葉を添えるようにしています。直訳すれば、「楽しくやろうぜ!」とでも言ったところでしょうか。第15回第16回で紹介した「グラウンドルール」には、欠かさず入れるようにしています。

 世の中では一般的に「遊び=楽しい」「仕事=辛い」という図式ができあがっている場面が多いような気がします。「楽しむこと」は余暇や息抜きとしては必要だが、仕事や自分に課されている責務には当てはまらない、という意識が強いからかもしれません。

 ところでみなさんは『ショーシャンクの空に』という映画をご覧になったことがあるでしょうか。主人公の元銀行員アンディは、妻とその愛人を射殺したという身に覚えのない罪で、ショーシャンク刑務所に投獄されます。初めは刑務所が持つ異質な雰囲気と囚人たちからの苛めや看守や所長たちの責めに戸惑い孤立するアンディですが、決して希望を捨てず、自由を信じ続けます。

 その後、囚人仲間との人間関係の構築に成功し、ひいては看守や所長の信頼まで得るようになります。そして、偶然にも無罪を立証してくれる証人を見つけるのですが、所長の陰謀でもみ消されてしまいます。無罪放免が難しいと分かると手段を脱獄に変え、これに成功するといったストーリーです。

 なぜ、この映画に触れたかといえば、目的である自由を勝ち取るまでに紆余曲折はありますが、この映画が筆者に「希望を持ち続けること」「目の前のことに真剣に打ち込むこと」を教えてくれたからです。囚人仲間にビールをふるまい、刑務所内に図書館を作り、若い囚人に教育を施すことなど、一つひとつの物事に真剣に取り組み、少しの打算の気持ちもなく、それ以上にこれらに楽しみを見出している姿に感動を覚えました。