ファシリテーション・テクニックを極める当研究所。現場で培ってきた数々のテクニックやノウハウの中から、即効性があるツールを紹介しています。第15回と第16回は、「グラウンドルール」です。プロジェクトに参画するメンバーのモチベーションを高め、チームの力を引き出すことで、プロジェクトを成功に導きます。今回はグラウンドルールの概要やグラウンドルール定義のステップについて紹介します。

 定常業務とは異なり、多くの部署からメンバーが集まるプロジェクトワークでは、初めて一緒に仕事をするメンバーが少なくありません。立場や価値観が異なるメンバーが、“一枚岩”のチームとして仕事に取り組むことは、なかなか困難です。チームが目標に向けて最高のパフォーマンスを発揮するためには、目的が一致しているだけでは足りず、チームメンバー同士の信頼関係と一体感が重要です。

試合以外ではユニフォームを見せない強豪チーム

 例えば、ある強豪ラグビーチームには、「試合以外では、誰にもチームのジャージ(ユニフォーム)を見せてはならない」という“鉄の掟”があるそうです。試合以外でジャージを目にすることができるのは、ジャージの管理者と洗濯担当だけです。洗濯したジャージを干すときも人目に触れてはなりません。宿舎には干せないため、次の試合までに東京に下宿している下級生の部屋で乾かし、宿舎に持ち帰るといいます。

 「試合前にジャージを配る姿を誰にも見られてはならない」という掟もあります。担当者は深夜、みなが寝静まった頃にジャージを配ります。配られたメンバーも、試合までジャージを見てはならないそうです。これは、ジャージが簡単には手が届かない特別な存在、憧れの存在であることを選手に植えつけるのが狙いです。

 この他にも「下級生は上級生に自分から話しかけてはならない」「上級生から誘われない限り一切の飲酒を禁ず」など、周りからみれば“とんでもない”ルールが多数あります。ところが、初めは戸惑っていた下級生たちも1~2カ月もすれば、すっかりこの世界観にはまっていきます。そして、これらの“とんでもない”ルールを通じて、自分がチームメンバーの一員であることを実感・確認するということです。

 一方で、「グラウンドには厳しい上下関係を持ち込まない」というルールもあります。宿舎内での厳しい上下関係としての規律と、信頼関係を重視しながらも実力主義を貫く姿勢を、これらのルールには感じられます。

 また大躍進したサッカー韓国代表チームを率いたヒディング監督も、チームのパフォーマンスとルールの関係を熟知していると言えるでしょう。彼は、練習時はもとより、食事のときまでも、選手や監督、協会関係者までの服装を統一し「23人で構成された一つの体」という一貫した哲学を貫き通しました。

 チームにおける特徴的なルールは、チームとしての個性を生み出し、集団としての力を高める役割を果たします。こうしたルールを、当研究所では「グラウンドルール」と呼びます。

 グラウンドルールと言うと何やらおおげさな響きがしますが、平たく言えば、プロジェクトのルールです。プロジェクトを1人ひとりにとって意義あるものにするため、チーム全員の行動規範として必ずグラウンドルールを定義するのです。