ファシリテーション・テクニックを極める当研究所。現場で培ってきた数々のテクニックやノウハウの中から、即効性があるツールを紹介しています。第15回と第16回は、「グラウンドルール」です。今回は、メンバーで決めたルールを徹底し続けるためのポイントやプロセス改善への活用について紹介します。

 前回、当研究所が使っているグラウンドルールの一例を挙げました。次のようなルールです。

・時間厳守(集合時間、終了時間)
・アジェンダに集中する
・建設的な意見を出す
・ヒソヒソ話をしない
・ほかの人の発言に割り込まない

 こうしたルールは、いわば当たり前のことです。誰もこれらに対して異論を唱えたりはしないでしょう。では、あなたがファシリテータとなった会議で、グラウンドルールに反して遅れて来たメンバーがいたとしましょう。あなたはその人に直接、ルールを守るように指摘できるでしょうか?

 ここで「もちろんできる」と答えられれば、それは素晴らしいことです。しかし、実際には面と向かって直接指摘するとチームの人間関係にかどが立つなど、躊躇(ちゅうちょ)してしまう人が少なくないのではないでしょうか。

個人の指摘をチームの指摘に変える

 こんなときは、壁に貼り出されたグラウンドルールを指さし、プロジェクト開始当初に決めたルールを再度確認するのです。こうすれば、ルール違反に対する指摘は、個人の指摘からチームとして指摘になり、違反したメンバーへの指摘も容易になります。

 個人が指摘すると、役職の上下関係によって言いづらくなったり、下手をすれば相手に「生意気な」といった印象を残してしったりする危険があります。これに対し、チームとしての指摘であれば、立場の上下に関係なく、ルール違反に対する指摘は、チームで決めたルールを徹底するための協力行為になります。当然ながら、指摘されたルールは本人もキックオフ時に合意したルールです。指摘するほうも、されるほうも気分を害することはありません。

 誰が指摘するかについては、気がついた人が確認をうながすのが一番です。ですが、ファシリテータが定期的に、会議の冒頭やプロジェクトのチェックポイントなどの時間を使って、ルールを確認し規律を守るよううながすのも効果的です。グラウンドルールに「ルール違反の指摘に感謝しよう」といったルールを追加するのも良いかも知れません。