経営コンサルタント
情報システムコントロール協会 東京支部 理事
日本ITガバナンス協会 事務局長
梶本 政利

 IT投資のフレームワーク(枠組み)「Val IT」を使って,正しいIT投資の考え方を説明する本連載も第3回を迎える。今回は第1回第2回で説明したVal ITを利用して,IT投資に関するポートフォリオを具体的に示し,そのポートフォリオをどのようにマネジメントするかについて解説する。

IT投資の全体像をとらえる

 Val ITはIT投資の全体をポートフォリオでとらえ,ポートフォリオを使ってIT投資全体をマネジメントする考え方をとる。ポートフォリオとして,例えば表1のようなものを提案している。

表1●Val ITによるポートフォリオの例
表1●Val ITによるポートフォリオの例

 このポートフォリオは,IT投資の管理対象となるすべてのIT関連プロジェクトを網羅している。プロジェクト全体を「方針決定済みで未承認」と「承認済み」の2つに分類。さらにそれぞれを「必須(絶対に実行)」と「任意(各種条件が満たされた場合に実行)」に分類している。

 表1で挙げている「プロジェクト1A」「プロジェクト1B」といった個別プロジェクトごとに,ビジネスケース(個別実行計画)が対応している。ビジネスケースの中で,対応する事業にもたらす価値,評価指標,撤退すべき場合の条件などを明示しておく。これらの項目や,対応する事業の優先順位に基づいて,各プロジェクトの優先度が決まることになる。

 ポートフォリオでの分類は,状況によって変化する可能性があることに注意してほしい。「必須」「任意」という分類も,社会・経済状況や事業環境が大きく変化する場合には見直しが必要になるケースもあり得る。