セキュリティランキング
(2008年1月1日~12月14日)
1位 「Windows Update」のエラー報告が急増中、原因はウイルス――特定のサービスを停止して更新不能に、雑誌や知人が原因の場合も
2位 最優秀アンチウイルス・ソフトは「AntiVirusKit」,最下位は「Microsoft OneCare」
3位 画像ファイルに偽装した,HDDをフォーマットしようとするトロイの木馬がネットで話題に
4位 「Gooogle」サイト出現、検索結果と一緒にウイルスを送り込む
5位 【続報】トレンドのサイト改ざん、手口やウイルスがほぼ明らかに
6位 「ノートン・アンチウイルス」をかたる偽セキュリティソフト出現――Google経由で配布サイトに誘導、「ノートンカラー」の黄色で誤解させる
7位 人気の圧縮ソフト「Lhaplus」にまたもや危険な脆弱性――圧縮ファイルの処理に問題、悪質ファイルを読み込むだけで被害の恐れ
8位 「メールを読むだけでルーターが設定変更される」、驚異の新攻撃出現
9位 Win版iTunesアップデートにSafari,MozillaのCEOがAppleを批判
10位 「1万以上のWebページが改ざん」――マカフィーも大規模攻撃を警告
11位 「Webアクセスだけで被害の恐れ」、WindowsやIEに危険な脆弱性が多数
12位 「USBメモリー経由のウイルス」が猛威、トレンドマイクロが注意喚起
13位 「Flash Playerを更新してください」――ウイルスサイトの新手口
14位 「報告数が少なかったので告知が遅れた」――トレンドマイクロ製品の障害
15位 新たな「PDFウイルス」出現、ほとんどの対策ソフトが検出できず――Adobe Readerなどの新しい脆弱性を悪用、ファイルを開くだけで被害
16位 Windowsに「緊急」の脆弱性、「悪用するワームが出現する恐れ」――マイクロソフトはパッチを緊急リリース、「限定的な標的型攻撃」は既に出現
17位 「日本を狙ったWebページ改ざんが継続中」、セキュリティ企業が警告
18位 「原田ウイルス」に気をつけろ!――IPAが注意喚起
19位 「悪かったのは売り方だけ」――Mac初の「偽ソフト」開発者が弁解
20位 トレンドマイクロのWebサイトが改ざん、ウイルスのわなを仕込まれる

 「セキュリティ対策が進んだ結果,ウイルス対策ソフトをかたる偽ソフトが横行した」。セキュリティ・ベンダーのラックサイバーリスク総合研究所先端技術開発部の新井悠部長は,偽ソフトが多数出現した2008年をこう振り返る。Windows VistaのUAC機能は,ユーザーが意図しない操作を警告する。UACの対象とならない正規のインストール手順をふませるために,偽ソフトが横行した。3位の偽画像,4位の偽Gooogle,6位の偽ウイルス対策ソフト,15位の偽PDFと,ユーザーが警戒心を解く瞬間をウイルス作者が狙う傾向を示したニュースがランクインした。

 やっかいなのは,狙われていることをユーザーに気づかせないウイルスやボット・ネットワークが営利目的で売買されていることだ(関連記事)。売買する価値があるマルウエアは,ユーザーに気づかれることなくパソコンを乗っ取る。ユーザーにとっての兆候は,ランキング1位の「『Windows Update』のエラー報告が急増中、原因はウイルス」のように一見関係のないトラブルでしかないケースがほとんどだ。

 もっともWindows Updateに影響が出てしまうようなウイルスは「頭の悪い」部類で,洗練されたウイルスはひっそりと攻撃者が狙った情報だけを盗む。16位の「マイクロソフトはパッチを緊急リリース、『限定的な標的型攻撃』は既に出現」は,まだ世間に周知されていないセキュリティ・ホールを静かに活用する攻撃者の存在が分かる好例だろう。

 Windows Updateだけでなく,複数の製品を要する大手ソフトウエア・ベンダーの多くは自前の自動更新機能を持つ。9位にランクインした「Win版iTunesアップデートにSafari,MozillaのCEOがAppleを批判」はセキュリティ上の脅威を指摘したニュースではないものの,ユーザーが漫然とソフトをインストールする点で攻撃者のターゲットとなり得る可能性を示唆している。大手ベンダーのアップデータは来年の偽ソフトの新種候補と言えるだろう。

「Web改ざん」が目的から手段に変化

 2007年に引き続き注目を集め,セキュリティ・ベンダーが2009年以降も続くであろうと警告するのがWebサイトの改ざんだ。2008年は,セキュリティ企業のトレンドマイクロが被害にあった「トレンドのサイト改ざん、手口やウイルスがほぼ明らかに」がアクセスを集め5位となった。このほか改ざんを警告するセキュリティ・ベンダーの記事(10位,17位)が上位につけている。

 昨今の攻撃者にとってWebサイトは多数のユーザーを集める“釣り堀”。ボット感染を狙ったWebサイトの改ざんが後を絶たない。2008年はUSBメモリーなどに感染を広げるボットの存在が明らかになった(関連記事)。ランキングとしては「『USBメモリー経由のウイルス』が猛威、トレンドマイクロが注意喚起」という2008年3月公開の記事が12位に入った程度だが,集計末期の12月に入ってからUSBメモリー経由で感染するウイルスが急増した(関連記事1関連記事2)。

 ボットを感染源とするUSBメモリー・ウイルスは,日々自身を更新することでウイルス対策ソフトによる検知を免れる特性を受け継いでいる。こうした状況下で,検知率を評価した「最優秀アンチウイルス・ソフトは『AntiVirusKit』,最下位は『Microsoft OneCare』」が2007年公開の記事ながら2位につけた。

 なおWindows Live OneCareは最下位との評価を反映してか,2009年後半に無償のウイルス対策ソフトとして出直すことになった(関連記事)。エンジンはOneCareと共通とのことだが,2009年は有償/無償のウイルス対策ソフトのベストバイを判別する記事が引き続き注目を集めそうだ。