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ネット法(4)コンテンツ流通促進の法改正提唱で期待される議論の深まり今回は,そもそもネット法のような特別法でコンテンツの流通促進を図ることが良いのかという問題を検討します。 コンテンツ流通促進のための法改正の方向は,大きく二つあります。一つは著作権法の改正により対応しようとする方向,もう一つがネット法のような特別法を制定するという方向です。 ネット法の提唱団体である「デジタル・コンテンツ法有識者フォーラム」(以下,「有識者フォーラム」)自身が公表している「皆様からお寄せいただいたご意見・ご質問への回答」でも,コンテンツ流通促進は著作権法の抜本改正によるべきではないかとして,次のような質問が掲載されています。
これに対する有識者フォーラムの回答(注1)は,次のようなものです。
このうち1の,「伝統的な著作物の取引秩序に変更を加えることには慎重な議論が必要」というのは,そのとおりだと思います。著作物といってもさまざまな種類のものがあります。しかも,著作権法では登録不要で権利が発生しますので,著作権で保護されるコンテンツは結果的にかなりの数に上ることになります(ブログや掲示板の書き込みも著作物ですから,それだけでも相当な数になります)。他方,商業的に成り立つようなコンテンツは著作物の全体の数からすればごく少数であり,流通促進というどちらかというと商業ベースの話から,著作物全体に関わるような改正をしてしまうのは少し乱暴な気がします(注2)。
特別法のメリットは著作権以外の権利関係の問題処理ネット法という特別法を制定する一番のメリットは,2の「著作権以外の権利関係の問題処理」ではないかと思います。例えば,著作者人格権の問題について著作権法改正で対応したとしても,人格権由来の肖像権,パブリッシティ権といった権利がそのままであれば,権利処理の構造は現状と変わらないと考えられるからです。ただし,ネット法もさまざまな権利を具体的にどのように処理するかまでは提示していません。肖像権等の法律上明文の定めのない権利をどのような枠組みで処理するのかは,慎重な検討が必要になるでしょう。 3の「著作権法の抜本改正で目立った成果がない」という点も,特別法を考慮せざるを得ない理由でしょう。著作権法の改正は,前回紹介したフェアユース規定の導入については少し動き始めているようですが,これも議論が具体的になってくると反対論が強くなるかもしれません。 先ほども指摘しましたが,著作物の範囲は広く,著作権法の利害関係者は数多く存在します。従って,非商業的な著作物にも影響を与えるような根本的な著作権法の改正は,弊害が大きいと考えられます。他方,この弊害を避けるために,著作権法の中で商業的な著作物と非商業的な著作物を分けるような立法を行うとすれば,特別法を制定するのとそれほど違いはないでしょう。 最後に,ネット法に対する私の評価を述べさせていただきます。まず,特別法という形での処理の方向性については基本的に賛成します。しかしその一方で,ネット権を特定の事業者に認めるという処理の枠組みは,支配的な事業者を新たに創ることになってしまうだけではないのか,本当に流通促進につながるのか,という疑問が残ります。 また,コンテンツの適用範囲がネットに流通するコンテンツだけでよいのかどうか,さらに検証する必要があると思います。確かに,コンテンツをどのように分類するかは難しい問題ですから,ネットという切り口での分類は一つの割り切り方として良い面もあります。それでも,権利処理がコンテンツビジネスで権利処理で弊害が生じているのはネットだけではありません。ネットだけを先行させる理由がないように思えます。 しかしながら,ネット法という形でコンテンツ流通促進の法改正をある程度具体的に提唱したこと自体は,有意義なものであり,私は評価すべきことだと考えています。これを機にいろいろな対案がでてくるなど,さらに議論が深まってほしいと思います。 (注1)デジタル・コンテンツ法有識者フォーラムの「皆様からお寄せいただいたご意見・ご質問への回答」の5頁(注2)どのような形で著作権法を改正するのかにもよります
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