テレビ放送に割り当てられる周波数帯域の利用方法について,米Googleがまた新たな提言を行った。2008年3月24日,GoogleがFCC(米連邦通信委員会)に対し,いわゆる「ホワイトスペース」と呼ばれる周波数帯域の開放を要求する意見書を送ったと,欧米メディアが一斉に伝えた。

 Googleは詳細を明らかにしていないが,その計画を「Wi-Fi 2.0」「Wi-Fi on steroids」などと呼び,全米で使える次世代の長距離無線ブロードバンドの実現を目指しているという。

 海外メディアによると,Googleの通信/メディア担当法律顧問のRichard Whitt氏は,意見書の中で次のように説明している。「このホワイトスペースはすべての米国人にユビキタスな無線通信環境を提供できる千載一遇のチャンス。これを開放することは,既存のブロードバンド・サービス事業者間に今求められている,より健全な競争をもたらす」(同氏/washingtonpost.comに掲載の記事)。

 ホワイトスペースとは,地上アナログテレビ放送で確保していた空き帯域のこと。具体的には,放送で使われる2~51チャンネルのうち,実際に利用しているチャンネルの間の空白帯域を指す。デジタル放送では電波干渉が軽減できるようになったため,アナログ放送のように空き帯域を確保する必要性が低くなった。

 そこで,これを免許不要で利用できる帯域とし,モバイル機器に活用しようというのがGoogleの構想だ。全米規模で利用でき,ネットインフラが行き届いていない地域もカバーできる。また伝送速度が速いといった好条件もそろっており,この有益な資源を活用しない手はないという。

放送事業者が真っ向から反対

 ホワイトスペースのモバイル通信利用は,Googleとともに米Microsoft,米Dell,米HPなども提言している。各社はホワイトスペースの有効活用を図る団体「White Spaces Coalition」を設立しているがこの団体が2007年12月12日,そのロビー活動を推進する組織「The Wireless Innovation Alliance」を結成し,FCCに働きかけているのだ。Googleの今回の提言もその一環で,1週間ほど前には,MicrosoftのBill Gates氏も,この帯域の必要性について訴えている(Dow Jonesの記事)。

 なお,現在使われているアナログ放送のチャンネルは52~69。これが通称700MHz帯で,FCCによる競売が実施されことでも知られている帯域だ(関連記事:米国の700MHz帯オークション,注目のCブロックはVerizonが落札)。

 一方ホワイトスペースは,この700MHz帯のように単純にはいかないという事情がある。アナログ放送が廃止される700MHz帯と異なり,デジタル放送と共存することになるため,放送業界が(無線マイクのメーカーなども),電波干渉を懸念して大反対しているのだ(関連記事:NAB,未使用テレビ用周波数帯の開放に関して“反対キャンペーン”)。

 Googleなどは,そうした懸念は技術的な問題であり,今後解決できると主張している。放送波を感知することで利用されていない帯域を自動的に探す技術を導入したり,無線マイクや医療用テレメトリー(遠隔測定装置)には専用に36~38チャンネルを割り当て,ほかの機器との干渉を防ぐといった案を提示している(New York Timesに掲載の記事)。

 現在,FCCは,2つのカテゴリーでホワイトスペース利用の実現可能性を検討しているという。1つは低出力の個人向け携帯機器で利用するというもの。もう1つは,固定無線の商業利用だ。これらについてはMicrosoftなどが提供した試作通信機でFCCが試験を行っている(関連記事:米FCC,いわゆるホワイトスペース利用の無線免許不要のモバイル機のプロトタイプの追加テストを実施へ)。