写真1●日産自動車の行徳セルソ執行役員CIOグローバル情報システム本部長(撮影:新関雅士)
写真1●日産自動車の行徳セルソ執行役員CIOグローバル情報システム本部長(撮影:新関雅士)
[画像のクリックで拡大表示]
 日本を代表するグローバル・ソーシング先行企業といえば、日産自動車だ。すでにシステム開発・保守の30%強をインドで実施している。行徳セルソ執行役員CIOグローバル情報システム本部長(写真1)は、「2011年3月までの5カ年IT中期計画『BEST』では、最低でも40%以上まで高めたい」と意気込む。

 日産がメインで利用しているのは、インドのサティヤム・コンピュータ・サービスだ。日本だけでなく米国や欧州などのシステムも、同社に発注している。

 今後は仏ルノーと共同で、開発拠点「ルノー 日産 テクノロジー&ビジネスセンター インディア」をインドのチェンナイに設立する計画だ。「オフショア先のプロジェクトマネジメント・オフィス(PMO)や品質管理などの役割を担う30人の部隊を置く」(行徳CIO)という。

インドのチェンナイに500人を確保

  写真2●サティヤム・コンピュータ・サービスがインド・チェンナイに構える日産専用の開発拠点
写真2●サティヤム・コンピュータ・サービスがインド・チェンナイに構える日産専用の開発拠点
[画像のクリックで拡大表示]
 
写真3●サティヤムで自動車会社向け部門を率いるナラヤナン・ベンカタラマン氏
写真3●サティヤムで自動車会社向け部門を率いるナラヤナン・ベンカタラマン氏
[画像のクリックで拡大表示]

 インド南部のチェンナイにあるサティヤムの開発拠点。ここでは自動車業界向けのエンジニアリング系システムやシミュレーション用システム、車載ソフト、業務アプリケーションなどを研究・開発しており、これらの仕事に従事する技術者は1500人に上る。その3分の1にあたる500人が日産向けだ。

 500人は日産専用のビルに入居し、日産の日米欧拠点から請け負ったシステム開発・保守をこなしている(写真2)。サティヤムで自動車業界向け部門を率いるナラヤナン・ベンカタラマン氏(写真3)は、「日産の業務プロセスが分かりシステム開発の経験がある技術者を1カ所に集約することで、仕事の効率化や生産性向上が図れる」と説明する。顧客のシステムは世界に散らばっていても、開発はグローバルで1カ所に集中しているのだ。

 500人の仕事の割合は、日本が10%、欧州が30%で米国が60%とみられる。チェンナイのほか、バンガロールにもERP(統合基幹業務システム)パッケージの専門部隊約60人が、日産向けの仕事をしている。

厚木で「ベジ・ピザ」を食べる40人のインド人技術者

 サティヤムはチェンナイだけでなく、日米欧などにある日産のオフィスにも、インド人技術者をオンサイト要員として送り込んでいる。例えば神奈川・厚木の開発拠点には、40人前後のインド人技術者が詰めている。昼時になると、野菜だけをのせた通称「ベジ・ピザ」を食べる姿が見られる。

 サティヤムが日産から初めて仕事を任されたのは2003年のこと。日本での付き合いが始まりだ。翌04年に欧州拠点から受注を獲得し、06年には米国拠点の仕事も得た。ベンカタラマン氏は「コストと品質、納期など仕事で結果を出し、信頼を積み重ねていった結果だ」と振り返る。日産はインド・ベンダーのパワーを自社の競争力強化に生かしている。


■本特集に関連して、日経コンピュータ3月1日号に特集「IT鎖国の終焉 グローバル・ソーシングの幕開け」を掲載しています。ぜひ併せてお読みください。


<過去に掲載したグローバル・ソーシング関連特集>

オフショア最前線(全9回)

ベトナムの底力(全13回)

押し寄せるインドのITパワー(全10回)

これがITのチャイナ・リスクだ(全7回)

グローバル・ソーシングを語る(全4回)