写真1●ノバルティス ファーマの沼英明執行役員CIO(最高情報責任者)
写真1●ノバルティス ファーマの沼英明執行役員CIO(最高情報責任者)
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 世界140カ国で事業展開するスイスの製薬大手ノバルティス。同社は、日米欧など各拠点におけるシステムの開発・保守と運用・インフラ管理の発注先を、グローバルで統一している最中だ。

 開発・保守の発注先は分野に応じて3社あり、いずれもインド・ベンダーである。Web系システムがウィプロ・テクノロジーズ、独SAP製品の導入・保守がインフォシス・テクノロジーズ、データ・ウエアハウス(DWH)の構築・維持がコグニザント・テクノロジー・ソリューションズである。

 ノバルティスの日本法人、ノバルティス ファーマでCIO(最高情報責任者)を担う沼英明 執行役員(写真1)は、「グローバルでは3年前からインド・ベンダーへの発注を始め、2007年だけで50億円以上の開発を委託している」と説明する。

 日本法人も例外ではない。以前は国産ベンダーを使うことが多かったが、ウィプロなどに切り替えつつある。

「グローバルでシステム開発のガバナンスを効かせる」

写真2●ウィプロ・テクノロジーズのソームナート・ムカルジー氏
写真2●ウィプロ・テクノロジーズのソームナート・ムカルジー氏
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 ノバルティスはインド・ベンダー3社との開発契約をグローバルで結んでいるが、個別のシステムの仕様は、各国のIT部門が地域の需要や特性などに応じて決める。ここで、グローバル契約が威力を発揮する。例えば米国法人がデータ・ウエアハウスの構築を先行し、それが成功したら日本も同じベンダーに同様のシステムを構築してもらうことができる。

 沼CIOは「各国のIT部門の独自性を生かしつつ、グローバルでシステム開発のガバナンスを効かせるのが狙い」と説明する。

 受注側の体制はどうなっているのか。例えばウィプロは、220人強の技術者をノバルティス専用に確保している。インドのコルカタで開発チームを率いるソームナート・ムカルジー氏(写真2)は、「各国の開発案件を同じ開発基準、同じ開発ツール、同じ技術者で進めている」と話す。発注元の国に関係なく、システムの品質を均一に仕上げるための工夫だ。

 ウィプロの開発手法におけるもう1つの特徴が、開発や保守作業の「定価」を提示していることだ。開発するソフトに実装する機能、開発にかかる技術者の人件費、インフラなどの設備費から、「システムのリスト・プライスを算出する」(ムカルジー氏)。機能や性能を追加・拡張する際には、オプションとして価格に上乗せする。

 これにより、「顧客企業は開発・保守費を可視化できるようになり、投資効果を正当に判断できる」と、ムカルジー氏は説明する。「ノバルティスから大規模な案件を受注できたのは、このような仕組みを提案をしたからだ」と胸を張る。

 欧米企業では、ノバルティスのように世界規模で発注先を統一する動きが増えている。もちろん、選定候補になり得るのは、グローバルでサービスを提供できるベンダーだけである。

■本特集に関連して、日経コンピュータ3月1日号に特集「IT鎖国の終焉 グローバル・ソーシングの幕開け」を掲載しています。ぜひ併せてお読みください。


<過去に掲載したグローバル・ソーシング関連特集>

オフショア最前線(全9回)

ベトナムの底力(全13回)

押し寄せるインドのITパワー(全10回)

これがITのチャイナ・リスクだ(全7回)

グローバル・ソーシングを語る(全4回)