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情総研レポート

米国で“街全体をカバーする無線LAN”の失敗相次ぐ,シカゴ市は計画を無期延期

2007/10/17 日経コミュニケーション

いつでも,どこでも,市内ならば無線LANが使える--。自治体主導でインフラを整備して,市内一帯を公衆無線LANサービスでカバーするというアイデアがある。2004年ころから米国を中心にそうした計画が盛んに立ち上がった。例えば2006年にシカゴ市が立てた計画は,600平方km近い市内全体を無線LANでカバーするという壮大な計画だった。携帯電話に対抗する,新たな無線インフラになると期待された。ところが最近,こうした自治体主導の公衆無線LANサービスの計画が相次いで破たんしている。

(日経コミュニケーション)

 米シカゴ市は2007年夏,自治体による広域無線LANサービス提供計画の無期延期を決定した。ネットワーク構築を中心とした商用化までのコストが当初の予定を上回るうえ,想定される利用者が少なく,事業として成り立たないとの判断による。政府や地方自治体による広域なWi-Fi(無線LAN)網を活用した通信サービスは,シカゴ市のように根本的な計画の見直しが迫られるケースが全米で続出している。

 シカゴ市は2006年初頭,228平方マイル(約591平方km)に及ぶ地域にWi-Fi網を構築し高速な無線インターネット・サービスを提供する計画を発表した。実現すれば,自治体が運営するWi-Fiを活用した通信サービスとして全米最大の規模となる予定だった。この計画はインターネット接続事業者であるアースリンクとの提携により進められていた。計画の継続が困難であるとの判断に至ったのは,サービス提供には想定外の資金が必要になったからだ。

大ブームとなった自治体によるWi-Fiホットゾーン

 Wi-Fiなどの無線通信規格を活用して広域エリアをカバーし,インターネット接続を提供するサービスは「ホットゾーン」サービスとも呼ばれる。政府や地方自治体が主体となってホットゾーンを推進する計画が,米国を中心に活発に立ち上げられてきた。

 口火を切ったのはフィラデルフィア市。2005年4月に発表した「ワイヤレス・フィラデルフィア」計画は,約1000万ドル(約12億円)を投じ,135平方マイル(約350平方km)に及ぶ市内全域をWi-Fiネットワークでカバーするという壮大な構想だった(関連記事)。さらにサンフランシスコ市では,Wi-Fiホットゾーンを活用して全ての市民がインターネットにアクセスできる環境を構築し,深刻な社会問題であるデジタル・デバイドの解消に役立てるという計画を立てた (関連記事)。サンフランシスコ市は,米グーグルと連携してネット広告を表示した場合は通信料金を無料にすることも発表し,新たな通信サービスとして脚光を浴びた(関連記事)。

 政府や地方自治体によるホットゾーン計画は,その後さらなる拡大の様相を見せる。業界向けに情報を提供するMuni Wirelessによれば、2007年5月時点で,Wi-Fi網を利用したサービスを提供したり、部分的にWi-Fiを活用する地方自治体は全米で175カ所にも上った。さらに,警察や消防署が既存の通信サービスから自治体運営サービスに乗り換えてコストを削減する構想や,Wi-Fi網に監視カメラなどを常時接続して住民が安全に暮らすための基盤づくりに活用する構想などが次々に登場。IT関連企業の参画や新規ビジネスとしての投資も活発化した。

 米ウォールストリート・ジャーナル紙によれば,2005年に1億1700万ドル(約137億円)だった米自治体の無線インターネット接続関連の支出総額は,2006年には2億3600万ドル(約277億円)とほぼ2倍に増加。2007年にはさらに倍増するとも予想されていた。

見通し甘く,予想外のコスト増が続出

 しかし,フィラデルフィア市の壮大な計画発表から2年半が経過した現在,自治体主導のホットゾーン計画が暗礁に乗り上げる例が目立ってきている。シカゴ市はその象徴的な一例で,ほかにもサンフランシスコ市やヒューストン市などが計画の中止や延期,規模縮小など計画を見直している。どの例でも,計画見直しの最大の要因は予想以上に発生するコストである。

 もともと,Wi-Fiホットゾーン計画は低コストでネットワークを構築できるという触れ込みだった。通信事業者でなくとも,ブロードバンド回線にアクセス・ポイントを設置するだけでサービス提供が可能だからだ。しかし実際には,広域をカバーするには当初の想定以上に多数のアクセス・ポイントが必要になったり,商用化に必須となる課金システムなどの構築に予想を超えるコストが発生した。

 予算が決まっている自治体運営サービスでは,こうしたコストをユーザーに転嫁せざるをえない。結果として料金値上げにつながり,通信事業者が提供する従来のブロードバンド・サービスとあまり変わらない料金水準となって住民の反感を買うケースも出た。これに加え,一部でWi-Fi機器から放出される電磁波が健康に悪影響を及ぼすという懸念が広がり,住民がネットワーク構築に反対する運動も起きている。

新たなライバル,WiMAXの登場

 ただでさえ自治体によるWi-Fiホットゾーンの旗色が悪いなか,強力な新ライバルまでもが出現しそうな状況だ。大手通信事業者の米スプリント・ネクステルが発表した,WiMAXサービスの商用化計画である。2008年から米国主要都市で展開する計画で,サービス予定エリアにはシカゴ市も含まれている。実現すればシカゴ市が見込んでいたWi-Fiホットゾーンの加入者を奪われる可能性が高い。

 実際,ホットゾーン計画から投資家が遠のくケースも多く,ビジネスモデルの見直しが迫られて地方自治体がさらにコスト負担を積み増す事態が多発している。全米最大規模となるシカゴ市の計画が浮上して2年余り経過しようとする今,Wi-Fiホットゾーン,WiMAXの動向を含めてワイヤレス・ブロードバンド市場に大きな変化が起きている。

宮下 洋子(みやした ようこ)
情報通信総合研究所 研究員
1999年情報通信総合研究所入社。国内外の携帯電話端末,Wi-Fi/WiMAX等の無線ブロードバンドを中心に国内外の通信市場を研究している。


  • この記事は情報通信総合研究所が発行するニュース・レター「Infocom移動・パーソナル通信ニューズレター」の記事を抜粋したものです。
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