今回は,なかなかパッケージ製品が普及しなかった販売管理アプリケーションを取り上げる。初回に紹介したとおり,販売管理アプリケーションは,財務管理(74.5%),給与管理(70.3%)に次いで3番目(58.2%)に導入率の高い基幹系業務アプリケーションである。ただし,現状ではユーザー企業の半数近くが,自社製のオーダーシステムを導入している。

 その要因は,「ユーザー企業の個別性が強い」ということに尽きるだろう。要するに,その企業が販売している商品が異なれば,販売方法も異なるということだ。財務管理や人事管理などのようには業務ルールが汎用性を持たないため,パッケージとして標準化しにくいのである。このためベンダー各社は,販売管理パッケージに「業種別」という切り口を打ち出している。それでも,やはりノンカスタマイズで一発導入という形態は考えにくい。

 こういった現状でもやはり強いベンダーは「製品の良さや認知力に加え,カスタマイズなどのサポート力」を持って,中堅・中小企業で実績を上げている。それが,大塚商会とOBCだ。両者ともにパッケージを核にした「カスタマイズ」によって企業の個別業務に「合わせる」ことで,完結できる販売をしている。以下,利用実態のデータを見てみよう。

大塚商会のSMILEα販売管理が僅差でシェアトップ

 最初に触れたように,販売管理のアプリケーションはパッケージが50.3%,自社製オーダーシステムが49.7%となっている(図1)。パッケージの製品別シェアでは大塚商会とOBCの2社が大勢を占めており,下位ベンダーが数多く存在している状況だ。数値としてはトップの大塚商会が「SMILEα販売管理」で12.6%,2位のOBCの「商奉行」が11.8%,3位の「蔵奉行」が11.1%。4位以下は一桁台のシェアを有するベンダーが割拠している。

図1●販売管理パッケージの製品別シェア(Nは有効回答数)
図1●販売管理パッケージの製品別シェア(Nは有効回答数)

 販売管理は企業の独自性が要求されるだけに,「パッケージの出来」に対してユーザー企業の満足度がどうなるか興味深かったが,調査結果を見る限り,他の基幹系業務のパッケージに比べて評価が低いということはなかった。シェア上位のパッケージ製品の評価は,「SMILEα販売管理」が73.9,「商奉行」が72.9,「蔵奉行」が72.4(図2)。パッケージの導入率は低いながらも,ユーザー企業の利用満足度は悪くない。今後は,「自社製オーダーシステム」の割合がさらに小さくなり,パッケージの導入が間違いなく進むだろう。

図2●販売管理パッケージのシェア上位製品の評価(Nは有効回答数)
図2●販売管理パッケージのシェア上位製品の評価(Nは有効回答数)

 一方,年商別で見ると,販売管理のパッケージ導入率には明らかな差が出ている。やはり企業規模が大きくなればなるほど,社内の業務体系も複雑になり個別性がさらに増すことになる。このため,自社製オーダーシステムを利用している企業の比率は,年商50億円未満の企業が39.6%なのに対し,年商50億円以上の企業では61.4%と達している(図3,図4)。同じ中堅・中小企業でも,企業規模の大きい層(いわゆる中堅企業)のパッケージ攻略が,ベンダーにとっての課題となっている。

図3●販売管理パッケージのシェア(年商50億円未満,Nは有効回答数)
図3●販売管理パッケージのシェア(年商50億円未満,Nは有効回答数)

図4●販売管理パッケージのシェア(年商50億円以上,Nは有効回答数)
図4●販売管理パッケージのシェア(年商50億円以上,Nは有効回答数)

 最後に今後の導入予定を紹介する。パッケージを導入する企業が61.1%と一応6割には達している。導入予定シェアは,「SMILEα販売管理」と「商奉行」が21.2%で同率トップ,3位が「蔵奉行」で18.2%だった(図5)。「評価された自社パッケージ+豊富なカスタマイズ=サポート力」の双方を兼ね備える大塚商会,OBCの両社が,年商50億円未満の企業層で,今後さらに勢力を伸ばしそうである。

図5●販売管理パッケージの導入予定シェア(Nは有効回答数)
図5●販売管理パッケージの導入予定シェア(Nは有効回答数)

 次回は,人事管理アプリケーションを取り上げる。

 なお回答企業プロフィールなどの調査概要については,こちらをご覧ください。

■伊嶋 謙二 (いしま けんじ)

【略歴】
ノークリサーチ代表。大手市場調査会社を経て98年に独立し,ノークリサーチを設立。IT市場に特化した調査,コンサルティングを展開。特に中堅・中小企業市場の分析を得意としている。