=== (前編を読む) ===

 中部日本放送(CBC)は,ワンセグへの取り組みが積極的なTBS(東京放送)の系列局であり,CBC自身もワンセグへの取り組みを進めている。技術局システム開発部 副部長の和田隆氏とテレビ編成局メディア・コンテンツセンター メディア・コンテンツ部 課長代理の湯澤巧氏に,ワンセグ放送への取り組みとサービス内容について聞いた後編である。

(聞き手は隅倉 正隆=IT放送技術ジャーナリスト兼コンサルタント)


--- データ放送を活用した番組にはどのようなものがありますか。

 番組連動コンテンツは,全国ネットの自社制作番組とローカル番組の両方で提供しています。全国ネット放送はレギュラーの「ドラマ30 新キッズ・ウォー2」「ウルトラマンメビウス」「週刊!健康カレンダー カラダのキモチ」です(表1)。

表1 CBCのワンセグ放送---自社制作番組の番組連動データ放送一覧

写真1 ローカルのバラエティ番組「なつめぐ堂」ワンセグ限定で番組裏話を提供している。

 ローカル番組では,毎週金曜深夜のバラエティ番組「なつめぐ堂」に一番力を入れています。MEGUMIと若槻千夏が出演し,架空のセレクトショップの設定で商品企画を行う番組です(写真1)。

 なつめぐ堂は,若者をターゲットとした深夜番組です。ワンセグの連動データでは,ワンセグ視聴者だけしか見られない番組の裏話情報を提供しています。この番組は携帯向けのモバイル・サイトでも仕掛けています。ワンセグでは提供していない双方向サービスとして,番組に登場する3人のTシャツ・クリエーターを視聴者が投票して選ぶといった企画です。実際,かなりのアクセスがありました。今後はアーティストの着うたがダウンロードできるように対応する予定です。

 この番組のコンセプトは「ワンセグも含めて,テレビを見ながら携帯で遊ぼう」です。ワンセグの対応端末の台数が増えてきたら,ワンセグでもモバイル・サイトで提供しているような双方向サービスを提供したいと考えています。

 ワンセグのデータ放送では双方向サービスを現在は提供していません。CBCは公式モバイル・サイトの番組サイトを充実させています。当面はワンセグ放送からは,モバイル・サイトに誘導して,そこからプレゼントやクイズなどの双方向サービスを利用してもらう考えです。

 双方向サービスへの誘導は,毎週土曜日9時25分~14時まで放送している情報番組「晴れどきドキ晴れ」でも行っています。月1回の視聴者参加のクイズで,モバイル・サイトの2次リンク・コンテンツに誘導し,クイズに参加できます。

 「晴れどきドキ晴れ」は情報番組ですので,紹介されたお店の情報などをデータとして見せるサービスは重要です。現時点ではワンセグのデータ放送でお店の情報などを提供するところまでいっていません。データ放送で番組の概要を提供し,各コーナーに合わせて表示したバナーからモバイル・サイトへ誘導するようにしています。

 スポーツ番組では「中日クラウンズ」というゴルフ・トーナメント番組で,18ホールの紹介を1次リンク・コンテンツ(「第2回 ワンセグ放送のサービス・イメージ」の図3参照)として提供しました。これは評判が良かったです。キー局ではプロ野球番組での完全連動データ放送をしていますが,CBCではそこまで対応した番組連動は行っていません。文字が流れるマーキーで他球場情報を表示させるといった緩やかな連動を始めています。

 非連動型コンテンツでは,全国ニュースとローカル・ニュース,ヘッドライン・ニュースのニュースに加え,天気予報や地震情報,交通情報,プロ野球速報などを提供しています。サッカーのワールドカップ開催中は,TBSの提供でワールドカップ情報も提供しています(表2)。

表2 CBCのワンセグ放送---自社制作番組の非連動データ放送一覧

--- スポンサーと連携した実験番組について教えて下さい。

写真1 グルメ番組「うまい!の極み」スポンサーであるアサヒビールのサイト誘導や,プレゼントなどを実施

 実験番組というのは,アサヒビール1社提供のグルメ番組,「うまい!の極み」のスペシャル番組のことです。この番組は毎週火曜日の夜9時54分からの番組で,5月中旬に「うまい!の極みスペシャル」を放送しました(写真2)。

 トライアルとしては「アサヒビールのモバイル・サイトに誘導」「番組で紹介したお店の情報を1次リンク・コンテンツで提供」「ワンセグ視聴者へのアサヒビールのプレゼント」を行いました。ワンセグに限ったことではないのですが,こうしたスポンサー連携の話があれば,いろいろと試してみたいです。

--- ワンセグ放送に対する期待は?

 携帯向けモバイル・サイトへの誘導が第一です。それと,先ほどもお話したスポンサー連携などの実験的な番組があれば,積極的に取り組んで行きたいと考えています。

 テレビ局の立場として,ワンセグの普及によりテレビの視聴機会が増えてくれることを期待しています。つまり,ワンセグのデータ放送を充実させる以前に,外でもテレビを見て欲しいということです。面白い番組が放送されていることが分かったら,今度は家でのテレビ視聴につながるでしょう。

 そして,テレビをつけてもらうために,データ放送で何ができるかが大きな課題です。データ放送コンテンツを充実させるとテレビを見なくなるのではないかといった悩みもあります。「テレビは家の大画面で見て,同時にワンセグを使うと番組サイトに誘導しやすい」「出先では携帯サイトを見るよりも,ワンセグ携帯でテレビ見ようと思う」というイメージでコンテンツを作るといいのかなと思っています。

 番組と関連してシンプルな双方向サービスができるコンテンツにしていかないと,データ放送コンテンツや通信コンテンツの方が面白くてテレビを見なくなってしまっては困りますからね。このさじ加減が難しいところです。また,ワンセグで視聴機会が増えて,視聴率を取る方法を早く見つけたいです。

--- 今後の課題・問題点は何でしょうか?

 ワンセグはデータ放送帯域が狭いため,1次リンク・コンテンツや2次リンク・コンテンツといった通信を経由するコンテンツを多く利用しています。特に1リンク・コンテンツの表示,つまり通信サイトのレスポンスが遅い点が課題だと考えています。ですから,データ放送コンテンツと通信サイトにあるデータ放送サーバーの1次リンク・コンテンツとのバランスを今後は調整していきたいと考えています。

 端末の普及とワンセグ放送視聴エリアの拡大が今後の大きな課題です。名古屋でも地下鉄や地下街が多く,災害対策としてAMラジオを地下街で受信できるようにするキャンペーンを現在進めています。ワンセグでも視聴エリアの拡大や同様の災害対策は重要だと思っています。ただし,現時点では地下街などへのギャップフィラー(ワンセグの理解を深めるキーワード解説:「ギャップフィラー」参照)設置の具体的な動きはなく,今後の検討課題です。

=== (前編を読む) ===