機密情報管理としての従業員管理(4)
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【従業者のモニタリングを実施する上での留意点】 個人データの取扱いに関する従業者及び委託先の監督,その他安全管理措置の一環として従業者を対象とするビデオ及びオンラインによるモニタリング(以下「モニタリング」という。)を実施する場合は,次の点に留意する。 その際,雇用管理に関する個人情報の取扱いに関する重要事項を定めるときは,あらかじめ労働組合等に通知し,必要に応じて,協議を行うことが望ましい。また,その重要事項を定めたときは,労働者等に周知することが望ましい。 なお,本ガイドライン及び雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針(平成16年厚生労働省告示第259号)第三 九 (一)に規定する雇用管理に関する個人情報の取扱いに関する重要事項とは,モニタリングに関する事項等をいう。 ・モニタリングの目的,すなわち取得する個人情報の利用目的をあらかじめ特定し,社内規程に定めるとともに,従業者に明示すること。 ・モニタリングの実施に関する責任者とその権限を定めること。 ・モニタリングを実施する場合には,あらかじめモニタリングの実施について定めた社内規程案を策定するものとし,事前に社内に徹底すること。 ・モニタリングの実施状況については,適正に行われているか監査又は確認を行うこと。 |
上記留意点についての1つめのポイントは,モニタリングの目的をあらかじめ特定した上で,社内規定に定め,従業者に「明示」する必要があるということです。これは,従業員の同意までは不要です。他方,単に通知するだけでは足りず,従業員に利用目的を明確に示さなければなりません(注2)。
なお,上記の個人情報保護法ガイドラインでは,モニタリングの目的は特に限定されていません。ただし個人情報保護法以前の指針として,労働者の個人情報保護に関する行動指針(注3)というものが公表されていたのですが,その中では,労働者の健康,安全の確保,私用の防止や企業などの機密情報の漏えいによる損害防止,企業内の情報システムの安全確保などの目的で行われる場合を除き,常時モニタリングを原則禁止していました。従って,プライバシー侵害の問題も併せて考えると,利用目的自体も一定の合理性を持つものに限定することが好ましいといえるでしょう。
2つめのポイントは,モニタリングは社内規程(注4)に基づいて実施されなければならないということです。モニタリングの実施機関を定め,実施状況をチェックしなければならないという,手続き的な適正さが要求されています。
なお,モニタリング実施規程を策定する際には,労働組合等(労働組合がない場合は過半数代表)と事前に協議することが望ましいとされていますから,手続きを踏んだ上で従業員に周知することになります。「望ましい」ですから,事前協議が必要というわけではありません。しかし,事後のコンプライアンス上のリスクを回避する上では必要な手続きというべきでしょう。手続きを踏めば紛争が生じないというわけではありませんが,裁判になった時にプライバシー侵害を否定する有力な材料になるでしょう。
このような規程に基づく対応は,継続的なモニタリングを行う場合に必要とされるものです。「日経クイック情報事件」で問題となったような,特定の事件に対する一時的な調査にまで事前の規程策定などが要求されるわけではありません。ただし,必要に応じてモニタリングがあり得ることを周知しておくことは,望ましいといえるでしょう。
(注1)経済産業省「個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン」34頁
(注2)個人情報保護法のおける「本人に対し,その利用目的を明示」について経済産業分野ガイドラインは「本人に対し,その利用目的を明確に示すことをいい,事業の性質及び個人情報の取扱状況に応じ,内容が本人に認識される合理的かつ適切な方法によらなければならない。」としています
(注3)「労働者の個人情報保護に関する行動指針」
(注4)モニタリングの実施に関する社内規程の項目としては,目的,責任者の選任,責任者の権限及び義務,モニタリングの目的,モニタリング実施部門の選定及びその義務,実施承認の手続き,実施結果の保存,実施結果の利用承認,監査等実施の手続きといったものが考えられる
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■北岡 弘章 (きたおか ひろあき)【略歴】 弁護士・弁理士。同志社大学法学部卒業,1997年弁護士登録,2004年弁理士登録。大阪弁護士会所属。企業法務,特にIT・知的財産権といった情報法に関連する業務を行う。最近では個人情報保護,プライバシーマーク取得のためのコンサルティング,営業秘密管理に関連する相談業務や,産学連携,技術系ベンチャーの支援も行っている。 2001〜2002年,堺市情報システムセキュリティ懇話会委員,2006年より大阪デジタルコンテンツビジネス創出協議会アドバイザー,情報ネットワーク法学会情報法研究部会「個人情報保護法研究会」所属。 【著書】 「漏洩事件Q&Aに学ぶ 個人情報保護と対策 改訂版」(日経BP社),「人事部のための個人情報保護法」共著(労務行政研究所),「SEのための法律入門」(日経BP社)など。 【ホームページ】 事務所のホームページ(http://www.i-law.jp/)の他に,ブログの「情報法考現学」(http://blog.i-law.jp/)も執筆中。 |