KDDIが2006年7月に発売する第3世代(3G)携帯電話「E02SA」は,au携帯電話で初めて無線LANに対応した端末。モバイル・セントレックス・ソリューション「OFFICE FREEDOM」は,E02SAを端末として使って無線LAN上での内線通話を実現する。

 携帯電話への無線LAN機能搭載は,NTTドコモが2004年11月に発売したFOMA N900iLで実現してから徐々に製品が増えている。NTTドコモは2005年7月に発売したSymbian OS搭載のビジネスFOMA「FOMA M1000」でも無線LAN機能をサポートしている。さらにPHSでも,Windows Mobile 5.0をOSに採用したウィルコムの「W-ZERO3」が無線LAN機能を搭載している。KDDIは,これらに次いでE02SAを市場に投入することになる。

E02SAはNTTドコモのN900iLと同様
無線LANでVoIP内線通話を実現

 一口に無線LAN機能を搭載した携帯電話/PHSといっても,その目的は機種により異なる。FOMA M1000やW-ZERO3の無線LAN機能は,おもに高速データ通信を目的としている。一方,KDDIの新製品E02SAとFOMA N900iLは,主としてVoIP(voice over IP)による内線通話に無線LANを使う。E02SAは,FOMA N900iLと同様にVoIPによる内線電話と携帯電話による通話とを1台の端末で実現しているわけだ。オフィス内では内線電話として,外出時にはau携帯電話として状況に応じた使い分けが可能になる。

 無線LAN対応のau携帯電話を利用して構築するKDDIの内線ソリューションがOFFICE FREEDOMである。NTTドコモがFOMA N900iLを端末としたソリューションにPASSAGE DUPLEの名称を付けているのと同様の位置付けである。OFFICE FREEDOMは,KDDIが認定したパートナがソリューションを提供する。現在パートナとして公表されているのは富士通とユニアデックスの2社。どちらもFOMA N900iLの無線VoIP内線ソリューションで実績を持つインテグレータである。

セントレックス・サービスのOFFICE WISE
システムを提供するOFFICE FREEDOM

 OFFICE FREEDOMは,KDDIがサービス提供中のOFFICE WISEやNTTドコモが先行してソリューションを提供しているPASSAGE DUPLEと,どのような違いがあるのか。企業が抱える課題や状況に見合った最適なソリューションを選択するために,それぞれのソリューションの特徴と違いを理解しておこう。

 まず,OFFICE FREEDOMとOFFICE WISEの違いを整理する(図1)。技術的な違いとしては,内線の実現方式が異なること。OFFICE FREEDOMは無線LANを使ったVoIPで内線通話をするが,OFFICE WISEは通常の携帯電話の無線方式を使って内線通話を実現している。そのためOFFICE FREEDOMは無線LANのアクセス・ポイントなどの設備が必要であり,一方のOFFICE WISEは天井に設置する専用アンテナや,交換機能を備えた小型の無線基地局「OFFICE WISE装置」などが必要になる。

図1 KDDIが提供する2種類のモバイル・セントレックス・ソリューションwidth=
図1 KDDIが提供する2種類のモバイル・セントレックス・ソリューション
構内無線LANを使ったシステムの「OFFICE FREEDOM」と,au携帯電話方式を内線通話に使うサービス「OFFICE WISE」がある。

 もう一つの大きな違いは,構内の無線LAN設備を使うOFFICE FREEDOMは企業が導入するシステムであるのに対して,OFFICE WISEはあくまでもKDDIのサービスである点。OFFICE FREEDOMによる内線通話は自社設備上の通話であり,KDDIへの支払いは発生しない。一方でOFFICE WISEの内線通話はKDDIのサービスを使った通話となり,登録端末同士の通話は端末1台当たり月額945円(2年契約)または897円(3年契約)の定額料金がかかる。

 利用できる端末にも違いがある。OFFICE FREEDOMでは無線LAN対応の携帯電話機が必要であり,現時点では7月発売のE02SAだけが対象になる。OFFICE WISEならばau携帯電話であれば機種を問わないため,法人契約で利用中のau携帯電話をそのまま活用できる。

 その一方でOFFICE WISEはサービスならではの制約がある。一つは契約回線数で,OFFICE WISE装置をユーザー企業内に設置する「宅内設置型」は1000回線以上,OFFICE WISE装置の機能をKDDI側で持つ「局内設置型」でも300回線以上という条件がある。サービス・エリアも現状は宅内設置型が東京と大阪地区,局内設置型が東京の大手町エリア,目黒・品川エリアに限られている。OFFICE FREEDOMはユーザー設備としてVoIPに対応した無線LAN環境を用意すれば済むため,こうしたサービス側からの導入への制約はない。

 この2種類のソリューションについて,KDDIでは「OFFICE WISEは携帯電話で内線通話を実現することが主眼のユーザー向け,OFFICE FREEDOMは無線LANを使ったデータ通信を活用して業務アプリまで含めた携帯電話ソリューションを導入したいユーザー向け」(KDDI モバイルソリューション事業本部 モバイルソリューション商品開発本部 商品企画部 部長の中島昭浩氏)と説明する。

◇     ◇     ◇

 連載の3回目では,NTTドコモのソリューションとの違いや,KDDIのパートナが提供するソリューションなどを解説する。

(中村実里=ライター)

<<前回へ  次回へ>>