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KDDIは2006年3月,無線LAN機能を搭載した3G携帯電話「E02SA」(写真1)と,無線LAN携帯電話を使って内線通話を実現するソリューション「OFFICE FREEDOM」(オフィスフリーダム)を7月に提供開始することを発表した。
携帯電話/PHSを内線電話機としても使えるようにする,いわゆる「モバイル・セントレックス」が注目される中で,KDDIの新ソリューションは企業ユーザーにどのようなインパクトをもたらすのか。本記事では,既存のサービスと比較しながら,OFFICE FREEDOMの特徴や実現する機能などを3回にわたって検証する。
KDDIでは2種類めの内線ソリューション
NTTドコモと同じ無線LAN方式を採用
企業などの法人の内線電話システムを,携帯電話を端末として使えるようにする「モバイル・セントレックス」。これまでの有線の内線電話機やPHSによる構内コードレス・システムから,携帯電話を端末に置き換えることでユーザーの利便性を向上できる。携帯電話事業者各社は,法人マーケットの拡大をの一つの切り札として各種のソリューションを提供している(表1)。
その一番手となったのが,KDDIが2004年6月にサービスを開始したモバイル・セントレックス・サービスの「OFFICE WISE」(オフィス・ワイズ)。機種を問わずにau携帯電話をそのまま利用できる内線通話サービスであり,利用する際にはオフィス内に小型の専用アンテナを設置する。
同年7月にはボーダフォンが,同社の第3世代(3G)携帯電話を使うサービス「Vodafone Mobile Office」(ボーダフォン モバイル オフィス)を開始した。同一法人名義で契約した3G携帯電話を「オンネットグループ」と呼ぶ内線グループに登録するだけで,日本全国のエリアで登録端末間の通話料が不要になる。企業側で特別な設備を用意することなく利用できるのが特徴である。
さらにNTTドコモは同年11月に,無線LANに対応した3G携帯電話「FOMA N900iL」を発売。同時に,無線LAN上でVoIP(voice over IP)を提供する内線電話ソリューション「PASSAGE DUPLE」(パッセージ・デュプレ)」の提供を始めた。構内の無線LAN環境下では携帯電話事業者に支払う通信料が不要になり,PHSを利用した構内コードレス・システムに置き換わるソリューションと言える。
また,携帯電話事業者の取り組みに対して攻勢をかけるているのが,PHSサービスによる料金定額制を打ち出したウィルコムである。2005年5月からサービスの提供を開始した「ウィルコム定額プラン」は,ウィルコム端末同士の通話であれば,社内外で通話を月額定額料金だけで利用できる。このプランそのものは,内線ソリューションと銘打っているサービスではないが,社員同士の通話が無料になるという意味では広域内線通話サービスとして使える。
表1 おもなモバイル・セントレックス・ソリューション
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各社のサービスやソリューションはともに,料金を気にせず通話できる内線電話のコスト・メリットを携帯電話/PHS端末で実現している。固定の内線電話と比較すると,オフィスのレイアウト変更などに伴う配線工事などが不要になるというメリットもある。また,通話したい相手が社内のどこにいても直接連絡を取れるようになり,電話の取り次ぎを減らして業務を効率化できる。社外での連絡ツールとして携帯電話を利用して社内では内線電話機や構内PHS端末を使い分けていた状況から,すべての通話を携帯電話/PHS端末に一本化することで,コスト削減と業務の効率化を図れるというわけだ。
こうした中で,KDDIは無線LAN機能を搭載した3G携帯電話E02SAと,無線LAN携帯電話によって内線通話を実現するソリューションのOFFICE FREEDOMを提供する。前述の通り,KDDI自身がすでにモバイル・セントレックス・サービスのOFFICE WISEを提供している。また,無線LANを使った内線ソリューションもNTTドコモが先行している。では,後発となるKDDIのOFFICE FREEDOMは,どのような点で従来のサービスやソリューションと違いがあり,ユーザーにとってメリットがあるのだろうか。
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連載の2回目では,KDDIがすでに提供しているOFFICE WISEとの違いや利用イメージを解説する。
(中村実里=ライター)