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 無線LAN機器の相互接続性をテストし,ロゴを付与するWi-Fiアライアンス。IEEE802.11nはオプション項目が多いため,Wi-Fiロゴの有無が11nでは特に重要になりそうだ。Wi-Fiアライアンスのボードメンバーであるソニー 技術開発本部MT開発部 標準化推進担当部長の富樫 浩氏に,Wi-Fiアライアンスの動向と11n規格化前の相互接続性テストについて聞いた。

---11nのロゴ認定はいつから始めるのか。

 11nのドラフトがスポンサ投票にかかり,それが承認されたらすぐにでもロゴ認定のテストが始まる。時期でいえば,2007年の9月ごろだろう。今は相互接続テストの前段階の活動が始まっている。具体的には,11nの利用シーンや要求スペックの調査と,テストで要求される仕様を作る技術的な話し合いだ。

---11nのロゴ認定について,これまでに比べて難しい点は何か。

 認定のための要求仕様は,11nの必須項目とオプション項目を組み合わせたものになる。11nの規格ではオプションでもWi-Fiロゴを取得するための要求仕様に入ったり,11nの必須項目がWi-Fiの要求仕様に入らなかったりする。特に11nはオプション項目が多いので,必須項目とオプション項目をどう組み合わせるかが大変だ。

 また,11nは家電にも採用される可能性が高いので,サービス品質(QoS)なども考えなければならない。このように搭載機器が多様化し,用途によってプログラムが枝分かれするという流れは,IEEE802.11eに基づいたWi-Fiのロゴ認定プログラムであるWMM(Wi-Fi Multimedia)が出来たころから始まった。

---チップベンダーは現在の11nドラフトに準拠したチップ(いわゆるpre11nのチップ)をすでに発表している。これらの相互接続性をWi-Fiアライアンスではテストしないのか。

 Wi-Fiアライアンスとしては市場での混乱を避けたいと考えている。現時点で,pre11nの相互接続性をテストする計画はない。なぜなら,11nの仕様がしっかりと固まっていない段階で何らかのお墨付きを与えてしまったら,実際に11nの規格化が完了して正式なロゴを付与する際にユーザーが余計に混乱することが予想されるからだ。また,pre11nのロゴさえあればいいという風潮が生まれてしまう可能性もある。

 ただ,Wi-Fiアライアンスではプラグフェストと呼ぶ相互接続テストの場をpre11nにも用意する考えだ。プラグフェストは実際に機器を接続して要求仕様を詰めたり,認定プログラムで必要となるテスト用デバイス(テストの際に接続相手となる機器)を選定するために開催している。この場を利用すれば,各ベンダーはpre11nの段階でも相互接続性を確認できるだろう。

---現在,Wi-Fiロゴを取得していない製品が無線LAN市場で大きなシェアを握っていると聞く。ロゴの有無が売れ行きに影響していないようだが,Wi-Fiアライアンスの意味が薄れているのではないか。

 Wi-Fiロゴのような相互接続性の保証が重視されるのは,技術が未熟で,相互接続性が不安定なときだ。技術が成熟し,安い機器を買ってきても他の機器との相互接続性に問題がないようになってくると,ロゴの意味が薄れてくる。今は11gの混乱から時間が経ち,しかも次のハードルとなる11nのロゴがまだないので,ロゴの重要性が低下している時期だろう。

 11nのロゴ認定は2007年に始まるが,今年のトピックは簡易設定の相互接続性を保証する「Simple Config」のロゴ認定プログラムになる。このプログラムが始まれば,またWi-Fiロゴの重要性は高まると思う。

---簡易設定については,メーカー独自の簡易設定機能がすでにある。メーカーからの賛同は得られるのか。

 ベンダー独自の簡易設定機能を捨ててくれと言っているのではない。Wi-Fi方式も含めて,複数の簡易設定に対応すればいい。大事なことは,簡単かつ安全にアクセス・ポイントを利用できるようなしくみを作ること。ユーザーが慣れた方法を選べばいい。

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