「Web 2.0」という言葉をご存じだろうか。

 「2.0」とは第2世代という意味。ここ最近,Webの世界が従来とは少し違った動きをしており,Ajax(関連記事)をはじめとする新しい手法がどんどん登場している。インターネットの世界は成熟し,そろそろ次のステージに来ている。Web 2.0とはそんな概念のようなものを表した言葉で,ここ最近よく耳にするようになった。

 注目されるゆえんはこの言葉の発信者の一人がTim O'Reilly氏ということ。同氏と言えば「オープンソース」という言葉の提唱者の一人でもある。このことからもWeb 2.0には単なるキャッチフレーズ以上の何かがありそうだと言われていた。そんな同氏が論文を発表した。タイトルはズバリ「What Is Web 2.0」。今回はこの論文を見ながら新しいWebの世界について考えてみたい。

ブレインストーミングから生まれた概念

 米O'Reilly MediaのWebサイトに掲載されている「What Is Web 2.0」の副題は「Design Patterns and Business Models for the Next Generation of Software」。ソフトウエア,つまりWebアプリケーションについて,その設計パターンやビジネス・モデルに着目し,新たなWebが従来のWeb(「Web 1.0」と表現している)とどう違うのかを述べている。論文はWebで5ページある包括的な内容だ。したがってなかなか難解なのだが,今回は主にビジネス・モデルという観点から内容のエッセンスのようなものを感じられればと思う。

 同論文によると,Web 2.0というコンセプトは,O'Reilly社のカンファレンスで行われたブレインストーミング・セッションで出てきた。その中で,Web 2.0の意味するところを実例を挙げて表現したのが以下の例だ。

 例えば,「DoubleClick」がWeb 1.0なのに対し,Web 2.0は「Google AdSense」となる。「Ofoto」がWeb 1.0なのに対しWeb 2.0は「Flickr」。実例はまだまだ続き,「Akamai」に対し「BitTorrent」。「mp3.com」に対し「Napster」。「パブリッシング(出版)」という言葉に対しては「パーティシペーション(参加)」となる。これは「Britannica Online」(オンライン百科事典)がWeb 1.0なのに対し,Web 2.0が「Wikipedia」(関連記事)と説明していることと酷似している。

 ここに出てきたDoubleClickとはバナー広告を意味する。一方Google AdSenseは広告を自動検索/表示するサービスだ。またOfotoはオンライン写真サービスで,2001年に米Eastman Kodakが買収しており,Webでの写真共有のほか,プリント/フォトブックの注文受付などKodak社による従来型サービスも提供している。Flickrも写真共有サービスだが,APIを公開するなどし,開発者/ユーザーがサービスの機能を使ったさまざまなWebアプリを作れるようにしている。

NetscapeとGoogleの根本的な違い

 同氏はこのあたりのモデルの違いを,米Netscape Communicationsと米Googleを例に挙げて説明している。Netscape社はWeb 1.0の旗手,Google社はWeb 2.0の旗手なのだという。例えば,Netscape社のフラッグシップ製品はWebブラウザで,その目的は,高価格帯のWebサーバー製品市場を確立するというものだった。そのためNetscape社はブラウザ市場で優位に立とうとした。

 つまりコンテンツの表示方法の標準技術を統制するというNetscape社の戦略である。ブラウザ上でデスクトップ環境を提供する「Webtop」と呼ぶ機能を使って,ユーザーにコンテンツをプッシュ型でどんどん送る。そうしたコンテンツのプロバイダに高価なWebサーバー製品を買ってもらうというのが同社の目的だった。しかし周知の通り,ブラウザもサーバーもコモディティ化し,付加価値というものはNetscape社から離れ,サービス提供側に移っていった。

 Google社の場合はこれとは全く異なると同氏は説明している。彼らは正真正銘のWebアプリケーション企業で,このWebアプリケーションはサービスとして提供されており,パッケージ化され販売されることはない。また,そのアプリケーションには計画的なリリース・スケジュールはなく,あるのは継続的な改善のみ。だから延々とベータ版が続く。またGoogle社にはアプリケーションを各種のプラットフォームへ移植する必要もない。ユーザーは自分のマシンでWebブラウザを介してGoogle社のサービスを使うだけ。Google社が行っていることは,コモディティ化した大量のパソコンを安く買い集め,そこにオープンソースのOSを走らせ,そのうえで,自作のアプリケーションやユーティリティを稼働させているということ。

 Netscape社とGoogle社はともにソフトウエア企業だが,こうした点が根本的に違っており,それがWeb 1.0とWeb 2.0を大きく分けるものの1つと同氏は説明している。

 もう1つ見てみよう。前述のDoubleClickについてだ。