ここ最近「Ajax」なる新語が登場し,ブログなどを中心に話題を呼んでいる。Ajaxは,「Asynchronous JavaScript+XML」の略称。ユーザーのWebブラウザをサーバーと非同期で通信させ,ページをリロードすることなく画面表示を変更する手法。これによりWebブラウザで,デスクトップ・アプリケーション並みのスムーズなユーザー・インタフェースを実現させる。米Googleなどが自社サービスに採用しており,新しいアプローチとしてさまざまな議論を呼んでいる。今回はこのAjaxについて考えてみたい。

Ajaxを採用するネット企業が続出

写真1●GoogleのGmail
 写真1[拡大表示]は,Google社のメール・サービス「Gmail」。画面上で各種の操作を行っても,ページをリロードすることなく表示が変更される。「Google Suggest」(関連記事)は入力した検索文字列から残りの文字列を推測し,候補をドロップダウン・リスト形式で表示する。一文字入力するごとに候補がどんどん絞り込まれていくが,その際にもページがリロードされることはない。まるでFlashやJavaアプレットの画面のようだ。

 Google社が今年2月に始めた地図サービス「Google Maps」(関連記事)はもっと高度だ。地図の表示範囲を変えるには,マウスでドラッグしてずらすだけ。リロードしないので待ち時間がない。中心に表示したい部分をダブルクリックすれば,それに反応して地図が滑らかに動く。この4月に始めた衛星写真機能でも同様のことができる(例:ナイアガラの滝=米国とカナダ国境付近の衛星写真)。

 Ajaxの手法を採用しているサービスはほかにもある。今年3月に米Yahoo!が買収したの写真共有サービス・サイト「Flickr」(関連記事)。Google社のソーシャル・ネットワーキング・サービス「Orkut」やニュースグループ・サービス「Google Groups」,そして米Amazon.comの検索サイト「A9.com」も同様の手法を用いているという。日本でも,NTTレゾナントが4月19日,「Gooラボ」で地図サービス「エリア情報検索実験」を開始した。やはりマウスでつかんで地図をスムーズに動かすことができる(関連記事)。

技術の名称でなく,手法の名称

 Ajaxという言葉が聞かれるようになったのは,ここ数カ月のこと。この言葉を考えたのは,サンフランシスコのコンサルティング会社Adaptive Path。同社では,Google社などが最近積極的に取り組んでいるWebアプリケーションの新しいアプローチをこう呼び,その定義を同社共同設立者Jesse James Garrett氏のエッセイとしてWebで公開した。これがきっかけとなり,ブログなどで議論されるようになったという。(米CNET News.comに掲載の記事)。

 Adaptive社ではAjaxの定義として,次の要素があると説明している。


  • XHTMLやCSSといった標準技術を使った表示(プレゼンテーション)
  • DOM(Document Object Model)を用いた動的な表示と相互作用
  • XMLとXSLTを使ったデータ交換,データ操作
  • XMLHttpRequestを用いた非同期によるデータ取得
  • JavaScriptによるこれらの結合

 Ajaxとは特定の技術の名称ではないことがわかる。もちろん,Adaptive社が販売する製品でもなければ,同社の登録商標でもない。誰もが自由に使える昔ながらの技術を用いてGoogle社のような天才集団が新しいことをやっている。それらが,なかなか“クール”なWebアプリケーションであることから,この動きはWebの世界においてパラダイム・シフトとなるような出来事ではないかと同社が提唱しているのだ。

 ではいったい何が新しいのだろう。