Internet of Things(IoT)を実現する鍵となる膨大なセンサー。そのセンサーで得られるデータをクラウドなどに集め、瞬時に分析し、ビジネス上の判断や処理に生かすための分析基盤が進化している。米アマゾンもIoT向けサービスを開始、安価に導入できる環境が整った。

 「アマゾンがこの分野に進出してくるとは意外だった」―。米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のパートナー企業で、ビッグデータの転送サービスを手掛ける米フライデータの藤川幸一共同創業者は驚きを隠さない。

 AWSが2013年12月に開始した新サービスが話題になっている。クルマや工場の機械、各種インフラに設置したセンサーのデータを高速分析するのに使える「Amazon Kinesis」だ。これまでIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)の「Amazon EC2」やストレージの「Amazon S3」、データウエアハウス(DWH)の「Amazon Redshift」など、どちらかというと汎用的なITサービスを手掛けてきた同社が、ついにセンサーデータをはじめとするリアルタイム処理の領域に参入した。このことが驚きを持って受け止められている。

 センサーデータなどの活用を検討しているユーザー企業にとり、Amazon Kinesisは投資を抑制できるメリットがある。これまでIoTを実現するには、専用の分析システムを構築して、クルマやインフラなどに設置した大量のセンサーからデータを得るなど、大きな初期投資が必要だった。センサーデータの分析をAWSのようなクラウド上でできるようになれば、サーバーなどの初期投資や運用の手間をかけずにビッグデータを活用できる。「Amazon Kinesisは、IoTの分野に価格破壊をもたらすかもしれない」。前述のフライデータの藤川氏はこう語り、自社でもAmazon Kinesisを用いたIoT向け新サービスを企画している。

進化する分析基盤

 AWSの参入に象徴されるように、センサーデータの分析基盤が至る所で進化し始めている。

 IoTを実現するには、一般に四つのステップを踏む(図1)。まずクルマや工場、ビル、各種インフラ、個人が持つスマホや家電など、データを得たい場所にセンサーを「設置」する。次に大量のセンサーから得たデータを3Gなどの通信回線を用いてオンプレミスのサーバーやクラウド側に「集約」する。その後、サーバー上で専用のソフトを用いて「分析」を行う。例えば、統計的な処理を施してデータの傾向を導き出したり、特定の条件に合うパターンを自動検出して、センサーを設置した機器の故障を事前に予測したりする。最後が、得られた分析結果の「活用」。業務アプリケーションで特定の処理を起動したり、ビジネスインテリジェンス(BI)ツールで可視化して企業の担当者が閲覧したりする。

図1●データの集約や分析基盤が進化
センサーの「設置」、データの「集約」と「分析」、「活用」の4ステップから成るIoTの仕組み
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 これらIoTを構成する一連の要素の中で今、特に進化を遂げているのが、センサーデータを集約したり、分析したりする基盤システムである。以降では、分析基盤に関する三つのトレンドを紹介しよう。(1)クラウド化で分析基盤が安価に、(2)リアルタイム処理系とバッチ処理系の統合、(3)センサー側でデータ処理、である。

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