特集の第3回では、第2回に続いてETSIのNFV ISG(Network Functions Virtualisation Industry Specification Group)が2013年10月上旬に公開した公式文書から、ユースケースについて記述された文書(ETSI GS NFV 001 V1.1.1)をピックアップしよう。この文書からは、NFVによってこれまでの通信サービスがガラリと変化する可能性が見えてくる。例えば、これまで“箱売り”されていた企業のオンプレミス環境に設置するファイアウォールなどが、仮想化されて“通信サービス”として提供されるようになる、といった劇的な変化だ。
企業のオンプレミス環境に設置した機器を仮想化、サービスとして提供
NFV ISGが公開した文書には、代表的なユースケースが9種類記述されている(表1)。NFV ISGではユースケースはこれだけではないとしているが、少なくともここに記された9種類のユースケースは、NFVでまず実現されるサービスと考えてよい。
ユースケースとして記載された#1から#3は、NFVIaaS(Network Functions Virtualisation Infrastructure as a Service)、VNFaaS(Virtual Network Functions as a Service)、VNFPaaS(Virtual Network Platform as a Service)と、クラウドにおけるIaaS、SaaS、PaaSに対応するようなサービスを規定している点が面白い。
NFVIaaSは、第2回で紹介したNFVI(Network Functions Virtualisation Infrastructure)を提供する環境だ。NFVIは、コンピューティング、ストレージ、ネットワーク機能といったハードウエアリソースをハイパーバイザーなどで仮想化し、仮想コンピューティング、仮想ストレージ、仮想ネットワークとして柔軟に扱える基盤となる。
VNFaaSは、こちらも第2回で紹介したネットワーク機能を実現するためのソフトウエアパッケージである「VNF(Virtual Network Functions)」をサービスとして提供するユースケースになる。この文書では特に、企業のオンプレミス環境に設置する宅内機器(CPE、Customer Premises Equipment)を仮想化して、ネットワークサービスとして提供する例を記載している。具体的には企業のオンプレミス環境に設置するファイアウォール、WAN最適化装置などだ。
VNFとしてこれらの宅内機器の機能をネットワーク側で仮想的に用意すれば(vCPEとも呼ばれる)、企業側ではこれらの機器を保守する必要が無くなる。文字通り所有から利用へと大きく環境を変えることができる。
VNFPaaSは、VNFaaSと似たユースケースだが、こちらはサードパーティーが開放されたAPIを用いて、様々なサービスを作れるようなシーンを想定している。