名ばかりの顧客なら、どれだけ増やしても意味がない。実際の売り上げに結びつけるには、ネットで獲得した顧客を実店舗に誘導する「O2O」の仕掛けも必要となる。LINEを使ってO2Oを実現したパルコなどの事例を見ていこう。
ここ1年ほどで、若年層向けのマーケティングツールの「新常識」となったのがLINEだ。パルコや東急モールズデベロップメントが運営するSHIBUYA109は、今夏のセールでLINEを活用して集客増を達成した。ネット上の顧客を実店舗へ誘導する「O2O(オンライン・ツー・オフライン)」に取り組む企業にとって、無視できない存在になりつつある。
O2Oの実現手段として脚光
LINEの国内ユーザー数は2013年8月時点で4700万人を超え、その多くがスマホを利用している。しかも、LINEのメッセージは、スマホの待ち受け画面上にプッシュ通知され、すぐに読まれる。
パルコは5月中旬、LINEの公式アカウントを8月までの期間限定で開設(図1)。ユーザー間のコミュニケーションに使う「スタンプ」の配信を始めたところ、わずか2カ月で420万人の「友だち」を集めた。友だちはTwitterの「フォロワー」に相当する。スタンプ配信には1500万円の費用がかかるが、急速に見込み客を増やせる利点は大きい。
そして7月4日、毎年恒例のセールの開始に合わせ、LINE上でクーポンを配信した。店舗スタッフにLINEの画面を見せると、500円相当の割引券を渡すというものだ。全国19店舗合計で6000人の先着限定にしたところ、顧客が殺到。3日以内に割引券を配り終えた。
「クーポン配信後、5~10分すると多くのユーザーが開封して内容を確認した。顧客動員力がメールマガジンとは桁違いだ」。パルコWEBコミュニケーション部の會田夏美氏は舌を巻く。実際、セール期間の売り上げと来店客数は、前年実績を上回った。