味の素は2013年4月、レシピ検索と連動したネットスーパー向けシステム「ぴったりレシピ」を稼働させた(図1)。

図1●味の素のネットスーパー向けシステム「ぴったりレシピ」の仕組み
ぴったりレシピのシステムを担当する、味の素食品事業本部営業企画部の近澤絵里菜氏
[画像のクリックで拡大表示]

 消費者が味の素のレシピサイトで料理メニューを検索すると、メニューを作るのに必要な食材の種類と量が一覧表示される。それと同時に、提携するネットスーパーの「買い物カゴ」も表示される。その買い物カゴを利用して、消費者が食材を取捨選択することで、手軽に購入できる仕組みだ。

 システムの企画を担当した食品事業本部営業企画部の近澤絵里菜氏は「カレーを作りたい場合、通常のネットスーパーでは、ニンジンとタマネギ、ジャガイモをそれぞれ検索して価格を確認し、買い物カゴに入れる必要がある。当社のシステムなら一画面で完結するので、そうした不便を解消できる」と自信を見せる。

1万件のレシピと連動

 以前から味の素は、同社製品を利用する約1万件のレシピをWebサイトで公開してきた。この情報に、ネットスーパーが保有する商品情報を組み合わせるのが、ぴったりレシピの特徴だ。

 生鮮食品の価格や在庫の状況を味の素が毎日収集し、データベースを更新。最新の価格を買い物カゴに表示する。さらに、消費者の購買履歴を組み合わせて分析し、日替わりで推奨レシピを提案する機能もある。

 このシステムを、味の素は無料でネットスーパーに提供する。その理由は二つある。

 まずは、コンソメなど味の素製品の拡販だ。「レシピを参考にした人は(参考にしない人より)ネットスーパーでの購入単価が約1割高く、1度の買い物での購入点数も4.4個多い」(近澤氏)。レシピサイト経由でネットスーパー利用者が増えれば、味の素製品が売れる可能性が高まる。

 もう一つは、ぴったりレシピを通じて、食に関するビッグデータを収集することだ。「例えば、回鍋肉を作りたい消費者が、どのようなキーワードを検索するのかも把握できる」(食品事業本部営業企画部の迫田和良専任課長)。味の素の営業担当者は、こうした情報を小売店への提案活動の強化に利用できる。売り場作りなどに活用すれば、ネットだけでなくリアル店舗での増収も実現できる。

 稼働に先立ち、さいたまコープと提携して機能を高めてきた。今後、複数のネットスーパーに導入して全国展開を進める。