2010年1月のWindows Azure正式サービス開始から約3年半、国内ユーザーから要望が多かった「データセンターの国内配置」がようやく実現することが発表された。2013年春以降、矢継ぎ早に実施されているIaaSなどのサービス拡充と合わせて現状を報告する。

 米Microsoftは2013年5月23日、同社の統合クラウドサービス「Windows Azure」向けのデータセンターを国内2カ所に新設すると発表した。米国、欧州、アジアという既存の三つの主要地域(メジャーリージョン)に、日本を追加する。日本リージョンには、首都圏と関西圏という二つのサブリージョンを設定し、それぞれに1カ所ずつデータセンターを置く。具体的な提供時期やデータセンターの規模などの詳細については明らかにしていない。

 日本マイクロソフトによれば、これまで日本国内のユーザー、特に金融機関などからはコンプライアンスやパフォーマンスなどの観点からAzureのデータセンターの国内設置を望む声が非常に多かったという(代替サービスとして富士通が国内データセンターを使って提供中の「FUJITSU Cloud PaaS A5 Powered by Windows Azure」を使う選択はあった)。日本リージョンが開設されれば、「クラウドを利用したいが、データを海外に置きたくない」と考えているユーザーでもAzureを導入しやすくなる。

 日本リージョン内の二つのサブリージョン間では、「地域冗長」(geo-replication)と呼ぶ仕組みを使ってストレージサービスの自動バックアップなどを行うという。これにより、ユーザーはAzure上で扱うデータを、バックアップも含めて海外に出すことなく運用可能になる。

ミドルウエア込みのイメージを用意

 Microsoftは2013年春以降、Azureに関して、今回の日本リージョン開設以外にもさまざまなサービス拡充策を続々と打ち出している。それらのうち、企業システムのクラウド移行や連携を検討するITの現場にとって特に注目に値するのが、2013年4月中旬に正式サービスとして提供を始めたIaaSである「Windows Azure 仮想マシン」と「Windows Azure 仮想ネットワーク」の二つだ。

 どちらのサービスも、以前からベータ版として提供していたものだが、正式サービスとしたことを機にSLA(Service Level Agreement)による年間稼働率の保証を付けた。SLAによる年間稼働率の保証は、仮想マシンサービスが99.95%、仮想ネットワークサービスが99.9%となっている。

 IaaSに関しては、MicrosoftがOSおよびミドルウエアベンダーでもあるメリットを生かす。具体的には、Microsoft製のOSとミドルウエア(SQL ServerやBizTalk Serverなど)を組み合わせた仮想マシンイメージを標準で10種類以上用意し(バージョン違いなども含む)、マウスで選ぶだけですぐに新規の仮想マシンを利用できるようにした(図1)。

図1●ミドルウエア導入済みの仮想マシンイメージを用意
Windows OS導入済みの仮想マシンイメージに加えて、SQL ServerやBizTalk ServerなどMicrosoft製ミドルウエアが導入されたイメージを「ギャラリー」として用意しており、仮想マシン新規作成時に選べばすぐに利用できる
[画像のクリックで拡大表示]

 利用料金はOSとミドルウエアのライセンス料込みの体系にした。定額プランと従量課金プランがあり、後者では分単位での課金となる。

 Azureのリリース当初から企業システム向けプラットフォームとして利用しているゼンアーキテクツの岡 大勝氏(代表取締役 CEO チーフアーキテクト)は、AzureのIaaSサービスを、PaaSと既存の企業システムを結ぶ有力な手段になると評価し、こう付け加える。「従来のAzureにはオンプレミスとの連携に問題があった。PaaSだけでは一般的なデータ連携ソリューションが使えなかったからだ。IaaSによって、例えば他社のデータ連携ツールやETL(Extract/Transform/Load)ツールをAzure上に配備できるようになった」(岡氏)。

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