アサヒグループホールディングス(HD)は2013年7月、受注や出荷といった業務を、ディザスタリカバリー(DR)システムを使って2時間以内に再開できる体制を整えた。DRシステムは本番系の業務システムがストップしても、遠隔のバックアップサイトに切り替えて業務を継続させる仕組み()。「首都圏で大規模災害が発生しても、出荷業務を止めずに済む」と、同社IT部門の知久龍人ゼネラルマネジャーは語る。

図●アサヒグループホールディングスのDRシステム概要
三つの工夫を盛り込むことで、2時間以内の業務復旧を実現した。
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 伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の「TechnoCUVIC DRサービス」をベースにした。仮想化ホスティングサービスTechnoCUVICの仮想マシンで稼働するシステムに、データセンター(DC)間のバックアップやネットワーク環境を提供するもの。

 アサヒグループHDは、物理サーバー上の本番系システムに対し、関西DCのバックアップサイトではTechnoCUVICの仮想マシン上でシステム構築した。両システムのストレージをDC間ネットワークで結び、同期させる。実際の切り替え作業は次の通りだ。

 まず大規模災害が発生すると、アサヒビジネスソリューションズ(ABS)に本番系の切り替え指示を出す。それを受けてABSは、関西DCのシステム起動作業などに当たる。両DC間のデータは常時同期させているため、切り替え時にデータを移行する作業は不要だ。

 これらの作業は2時間以内の完了にこだわった。「それ以上遅れると、どれだけ急いでも当日中に全ての出荷業務を完了できない」(知久ゼネラルマネジャー)。そこで三つの工夫を盛り込んだ。

 一つめは、DR対象のシステムを「受注」と「出荷」、「メール」などに絞り込んだことだ。出荷業務に直接関係しない「会計」などは対象外とした。

 二つめは、DC間のデータ同期を15秒間隔にしたこと。「ほぼリアルタイムにすることで、本番とバックアップのシステムにおけるデータ差分の確認を省ける」と、ABSの川内浩営業・品質統轄部長兼営業推進課長は話す。

 三つめは、切り替え手順の改善。2012年12月のDRシステム構築後、実際の作業に沿った訓練を1カ月に一度のペースで実施。技術者が入力するコマンド処理を自動化するなどの手順見直しを重ねた。その結果、2013年7月に2時間以内の業務再開を実現した。習熟度を高めるため、「年末まで訓練を続ける」(知久ゼネラルマネジャー)という。