クラウドの「アマゾン ウェブ サービス」を国内で提供しているのが、アマゾン データ サービス ジャパンだ。既に2万社以上のユーザー企業が活用し、大きく注目されている。サービス開始後、これまで35回以上も値下げを断行するなど、徹底した顧客志向を貫いてきたという。代表取締役社長の長崎忠雄氏は、「アマゾン・ドット・コムのような小売業の発想で、常にサービス向上を考えている。そのためにイノベーションを起こしてきた」と話す。


アマゾン データ サービス ジャパン 代表取締役社長 長崎忠雄氏
写真●アマゾン データ サービス ジャパン
代表取締役社長の長崎忠雄氏

クラウドで急成長している理由は。

 アマゾン ウェブ サービス(AWS) では、クラウド技術を駆使した仮想サーバー、ストレージ、データベースなどのクラウドプラットフォームを提供している。当社の強みは、徹底して顧客の方を向いていることだろう。

 もともとアマゾン・ドット・コムは小売業からスタートしており、顧客の声を聞かないと成り立たない業界だった。グローバルベースのインフラを構築し、イノベーションを繰り返すことで、コスト削減などサービス向上を目指し、それがさらに多くのボリュームを産むという良い循環につながっている。こうした「企業DNA」は当社にも流れている。

 当社もイノベーションを起こすため、全精力を傾けている。AWSのサービスを開始してからこれまで、35回以上も値下げを断行してきた。ある一定のマージンが出てくれば、顧客に還元している。

 世界9カ所にデータセンターがあり、グローバルレベルのインフラを備えるため、それだけ安くサービスを提供することもできる。海外進出の日本企業のニーズにも応えられるだろう。顧客ニーズを満たすべくイノベーションを起こすことで、価格低減などに向けて常に努力している。

国内の実績はどうか。

 日本では既に2万社以上のユーザーがあり、他国より伸びている。クラウドがようやく日本でも受け入れられるようになってきたのだろう。

 今年度からAWSのスキルアップを狙ったトレーニングサービスを始めた。コンサルティングも実施し、既存の企業情報システムのどの部分をAWSに置き換えると最も効果的なシステムになるか、などをアドバイスしている。

クラウドに対する見方が変わってきている。

 これまでは基幹業務システム以外のところにクラウドを活用するケースが多かったと思うが、今は違う。オンプレミスとクラウドの連携など様々なスタイルが出てきている。独SAPのERPソフトがAWS上で稼働する時代だ。クラウドによる基幹業務システムが登場しても不思議ではない。まさに「クラウドファースト」の時代といえる。

 クラウドの時代は、システムの調達のやり方はもちろん、コストやスピード感が今までのシステム構築とはまったく異なる。夜間だけ使うシステムとか、新規プロジェクトだけのシステムとか、コストや運用の幅が大きく広がり、柔軟性が出てくる。クラウド活用の新たな勘所を確認するためにも、少しずつ導入して試していくなど、クラウドの特性を様々な企業に早く理解してもらいたい。