スマートフォンの実機を自前で用意することなく、ネット経由で手軽に借りて遠隔検証できる。こんなサービスが最近、注目を集めている。スマートフォン向けアプリ開発のテストに使えるほか、スマートデバイスの導入を検討する際の動作確認に使うなど、さまざまな活用法が考えられる。

 スマートフォン向けアプリケーションの開発やシステム構築において、欠かせないのが「実機による検証」作業である。コーディング作業中の基本的な動作確認程度なら、開発ツールキットに含まれるエミュレーターで事足りるケースも多い。

 だが、本番環境を想定したテストフェーズでは実機を使った検証が必要になる。ここで問題になるのが、複数種類の端末、しかも最新機種から古い機種まで幅広い端末での検証が求められることだ。こうしたニーズに応えるサービスが登場し、注目を集めている。

特定機種でのトラブルは日常茶飯事

 エミュレーターや手元の端末では問題なく動作しても、異なる機種で動かそうとすると「インストールできない」「起動しない」「エラーが出て止まる」「画面が崩れる」といったトラブルがしばしば発生する。

 こうした話はスマートフォン全般にいえるが、特に問題になる可能性が高いのは米GoogleのAndroid OSを搭載したスマートフォンのケースである。Google自体が端末開発に縛りをかけないオープンなスタンスをとっているので、世界中の端末メーカーや通信事業者がオリジナリティーを競って端末を製造および販売している。

 このため、「搭載デバイスの有無や種類」「OSバージョン」「ファームウエアバージョン」「搭載チップセット」などの違いによって、ビルドしたアプリが特定の機種でのみ動作しないなどのトラブルが日常茶飯事レベルで起こっている(図1)。

図1●スマートフォンの実機検証をするのが年々困難になりつつある
システム構築案件において「スマートフォン対応」はもはや必須事項となりつつあるが、そこで必要となるのが「実機を使ったテストや検証」である。しかし、端末の種類やサイズ、解像度などのバリエーションが増え続ける中、自前で複数の端末実機を用意して検証するのはどんどん困難になってきている
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 世界中で4000種類を優に超えるといわれるAndroid端末すべてで動作を検証するなどそもそも不可能である。仮に「国内大手通信事業者3社のAndroid端末」と限定しても、自前で用意して検証するのは年を追うごとに難しくなってきている。

 季節ごとに発売される新端末を次から次へと買うこと自体、コスト的に現実的ではない。仮に購入できるとしても、必要なときにすぐテストできるように維持・管理するのに膨大な手間がかかる。バッテリーを定期的に充電しなければならないし、テストが終わるたびに端末の初期化(リセット)作業なども待ち受けている。

国内では2012年に続々と登場

 こうした事情を背景として登場したのが、「Androidスマートフォン実機を使った遠隔検証支援サービス」(以下、スマホ遠隔検証支援サービス)である。手元のPCからインターネット経由で遠隔にあるAndroid端末の実機にアクセスし、開発中のアプリをインストールしたり、実機を触るのと同じように端末を操作して動作を確認したりできる。

 海外では2011年以前から同種のサービスがいくつか提供されていたが、国内で商用サービスの提供が始まったのは2012年春から。ソニックスの「Scirocco(シロッコ) Cloud」、NTTドコモとアクセンチュアの「リモートテストサービス」、カトマックの「リモート・スマホ・レンタル」、NTTレゾナントの「Remote TestKit for Android」(カトマックが技術協力)という四つのサービスが、2012年内に相次いでリリースされた。

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