スマホファーストの実現を支援する技術やサービスが、続々と登場している。もはやスマホ向けのアプリやそれらと連携するバックエンドシステムは、全てをスクラッチ開発する時代ではなくなりつつある。スマホファーストで一歩抜きんでるために、システム部員が知っておくべき五つのキーワードを紹介しよう。
MEAP
開発期間・コストを圧縮
スマホファーストを実現する技術の最注目株が、「MEAP(モバイル・エンタープライズ・アプリケーション・プラットフォーム)」だ。業務システムでスマホを活用するのに必要なモジュールの集合体で、スマホファーストの強力な武器になる。独SAPや米IBM、米コニーソリューションズなどが開発・販売している(表1)。
MEAPは、ゲートウエイや特定業界・業種向けのアプリ、アプリをカスタマイズする開発ツール、セキュリティの管理ツールなどから成る(図11)。アプリや開発ツールは、iOSやAndroidなど複数種類のスマホOSに対応する。人事やCRM、SCM(サプライチェーン管理)といった従業員向けの汎用アプリのほか、航空会社やホテル、銀行、保険といった業種における消費者向けアプリなどもそろっている。
例えば、ERPに接続するスマホアプリを開発しようとした場合、以前はゲートウエイに当たるシステムに加えスマホアプリもスクラッチから開発する必要があった。MEAPを用いれば、「スマホのOSがバージョンアップした際の対応などスマホアプリを継続的に保守していく際のTCO(総所有コスト)は、40~70%削減できる」と、コニーソリューションズの国内代理店であるサンフューチャーの担当者は説明する。
コニーソリューションズの場合、OSの新バージョンが登場した際、対応したMEAPのツールなどを30日以内に提供することを保証している。同社は2007年設立の企業だが、すでに米ユナイテッド航空や米デルタ航空、米マリオットインターナショナル、米シティバンクなど70社以上の大手企業が同社のMEAP製品を採用しているという。
日本国内では、MEAPを手掛けるITベンダーや導入事例は少ないのが現状だ。「これまでMDM(モバイルデバイス管理)の需要が主体だった」と、SAPジャパン モバイルソリューション部の片平麻里ソリューションスペシャリストは説明する。「今後は日本でもMEAP製品の販売に力を入れていく」(同)と言うように、今後、MEAPに注力したり新規参入するベンダーが増えそうだ。