米Salesforce.comが2012年9月に米国で開いた年次イベントDreamforce 2012で新サービスを一挙に発表した。特に注目したいのが基盤分野だ。ここでは、Salesforceの画面に既存の業務システムの画面を統合しシステム連携させる「Salesforce Canvas」をはじめ五つのサービスを取り上げる。
米Salesforce.comが2012年9月20日に、主にPaaS(Platform as a Service)に該当する「Salesforce Platform」の新サービスを一挙に発表した。
発表の舞台となったのは、同社が米サンフランシスコで開催した年次のプライベートイベント「Dreamforce 2012」(写真1)。今回の事前登録者は9万人を超えており、IT系のプライベートイベントとしては世界的に見て屈指の規模である。
ここでは今回発表された新サービスから、Salesforce Platformに関するものを五つ取り上げる(表1)。Salesforceのシステムと既存の業務システムの画面を統合した上で連携させる「Force.com Canvas」、Javaによる開発・実行環境「Heroku Enterprise for Java」、既存の業務システムを含めたシングルサインオンを実現する「Salesforce Identity」、マルチデバイスのアプリ開発を支援する「Salesforce Touch Platform」、ファイル共有サービス「Salesforce Chatterbox」である。
以降でこれらを順に詳しく紹介する。また別掲記事に、Salesforce Platformの技術責任者へのインタビューを載せた。
Force.com Canvas
「Force.com Canvas」は、Salesforceの標準画面と位置づけられている、“企業版Facebook”の「Salesforce Chatter」に、他の業務システムなどの画面を統合できるようにするサービスである。単なる画面の統合であれば従来もHTMLのインラインフレームによって可能だったが、Canvasによってシステム連携もできるようになる。
出張手配・経費精算の業務システムを例に取ると、そのWeb画面をChatterの画面に埋め込んだ上で、業務システムからSalesforceのクラウドにある顧客DBや商談履歴DBにアクセスして、訪問する顧客の住所を読み出したり、出張して訪問営業を行ったことを商談履歴DBに登録したりできる(図1)。
従来は、利用者がSalesforceの画面と業務システムの画面を行ったり来たりしながら、照会した情報をもう一方の画面に入力したり、同じ情報を二つの画面に重複して入力したりする必要があった。この手間が、Canvasを使ったシステムでは不要になる。いわば、Salesforceのサービスと業務システムが統合される。
Canvasの仕組みは次のようなものだ。まずユーザー企業は、Salesforce.comが提供するCanvasの開発ツール(JavaScriptライブラリを含む)を使って、業務システムのCanvasアプリケーションを作る。このCanvasアプリケーションは、利用者がChatterのリンクボタンから呼び出すことによって、Webブラウザー上で動作する。CanvasアプリケーションからSalesforceのDBへのアクセスは、REST(Representational State Transfer)などのAPI(Application Programming Interface)を通じて行う。
Canvasの正式版のリリースは、2013年中を予定しているという。