「業務に即していて操作性の高い、スマートフォン・タブレット端末のアプリをすぐに安く開発してほしい」。こんな要望が利用部門から出るようになってきた。従来の開発方法では、この要望に応えるのは難しい。そこで、ネイティブアプリをカンタンに開発できるサービスが相次いで登場している。

 スマートフォン・タブレット端末の業務利用が急速に進んでいる。最近の例を挙げると、2012年7月に野村證券が個人投資家を担当する営業員に約8000台のiPadを導入し、顧客訪問時に予期せず必要になった商品資料を取り出せるようにした。同年8月にはローソンが、Android搭載のタブレット端末1600台を店舗指導員に導入し、内蔵カメラで撮影した写真を用いて業務報告をできるようにした。

 このほか中小規模の導入事例は数多くあり、ビジネスの現場ではさまざまな用途でスマートフォンやタブレット端末が利用されている。

 それに伴い、利用部門からのスマートフォン・タブレット端末アプリ(以下、スマートフォンアプリ)の開発要望が強くなっている。その要望の傾向を表したのが図1である。

図1●スマートフォンアプリの開発要望
スマートフォンやタブレット端末のビジネス活用が進み、さまざまなアプリを作ってほしいという要望が高まっている。PCよりも業務に密着して使うだけに利用者のこだわりが強く、操作性や短納期の要求水準が高い。一方で、コストの制約が厳しい
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 まず、用途が広がっている。iPhone/iPadのネイティブアプリ開発を主力とするジェナの手塚康夫氏(代表取締役社長)は「開発依頼を受ける業務アプリは、カタログ、プレゼンテーション、ファイル共有、アンケート、マニュアルを中心に多岐にわたる」という。

 高い操作性が求められるのも、スマートフォンアプリの特徴だ。スマートフォン・タブレット端末はPCより業務に密着して使うだけに、操作性に対するユーザーのこだわりが強い。スマートフォン・タブレット端末アプリの開発環境サービスを提供するコラボステージの竹内 基(もとき)氏(代表取締役社長兼CEO)は、「利用部門が彼らの顧客にタブレット端末を渡してその場でアプリを使ってもらえる、というこれまでにないレベルの操作性を求められる」と指摘する。

 短納期の要求水準も高い。「明日にでも新しいアプリを使いたい」「新製品が登場したのですぐにコンテンツを更新したい」といった具合である。

 一方で、コストの制約はシビアだ。前出の手塚氏によれば、「予算が十分にないという事情により、成約に結び付かないケースが相当数ある」。受託したケースだけ取り上げても、開発費用は平均してアプリ1本当たり約250万円にすぎないという。

従来の開発方法では対応できない

 こうした要望にすべて応えるのは、Webアプリ、Objective-CもしくはJavaによるネイティブアプリという従来の開発方法では難しい。

 まずWebアプリでは、操作性を高めるのに限界がある。そのことを象徴するのが、米Facebookが2012年8月にリリースした新バージョンのFacebookアプリだ。

 従来のFacebookアプリは、iOSのUIWebViewによってWebアプリをネイティブアプリのように見せたものだった。しかし操作性の問題を解消できず、新バージョンでは完全なネイティブアプリに作り替えた。

 もう一つの、Objective-CもしくはJavaによるネイティブアプリでは、ITエンジニアに専門スキルが求められる。そのスキルを持つITエンジニアは不足しているのが実情で、短納期や低コストの要望を満たすのは難しい。

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