パブリッククラウドサービスのように、必要なパラメーターを設定すれば仮想システム環境を作成できる基盤を構築したい。そういったニーズに応えるクラウド向け統合機が続々と登場している。あらかじめ必要なハードとソフトが組み合わされていて、仮想システム環境がすぐに構築できる。
「パブリッククラウドのように使うことができる基盤を社内で構築したいというニーズは高まっている。ただしそのニーズに応えるのは難しい」。日本IBMの東根作とねさく成英氏(システム製品事業 システムx事業部 事業戦略担当部長)は指摘する。「パブリッククラウドのような」というのは、最小限のパラメーターを入力すれば、すぐにアプリケーションを動作させられるシステム環境(ミドルウエアより下のレイヤー)が整うということだ。システム環境は仮想技術を活用し、伸縮できるものが求められる。
こうした基盤は2層で考える必要がある。つまり、アプリケーションが動作する「仮想システム環境」と、仮想システム環境を複数作り出す部分(「仮想システム基盤」と呼ぶ)である。
これらを作るのは一筋縄ではいかない(図1)。仮想システム基盤は、物理マシン、物理ストレージ、OS、仮想化ソフト、Webサーバーソフト、APサーバーソフトなどからなる。それらを組み上げるだけならこれまでもやってきたかもしれない。だが、一つのシステム基盤の上に複数の仮想システム環境を作ることになるのだ。それぞれは異なるシステム要件の下、必要な性能、可用性、変更容易性などが求められる。「ハードやソフトをただ組み合わせただけでは、期待する品質を確保できない。個々の要素技術の特性を把握した上で、最適といえる設定になっていなければならない」と、日本オラクルの龍野智幸氏(Fusion Middleware事業統括本部 ビジネス推進本部 本部長)は説明する。仮想システム基盤の構築は難題なのだ。
一方の仮想システム環境は、利用者からの期間短縮ニーズに応えなければならない。「新事業の立ち上げスピードは速い。システム開発に3カ月かかっていては遅いと言われることは珍しくない」と、日本IBMの東根作氏は話す。仮想システム環境の作成に何週間もかけられない。とはいえ、仮想技術を用いたシステム環境は、各種仮想レイヤーがあるので設定対象が多く、意外と手間がかかる。短時間で実施するには高度な知識が求められる。