前回、進化型プロトタイプ開発の話をしました。約15年前にERPパッケージシステムが登場してきたときに、ERPパッケージの基本機能や業種別テンプレートをプロトタイプとして用いて仕様確定させるアプローチが期待されたことがありました。いわゆるフィット&ギャップ分析によるシステム設計アプローチです。ところが、このアプローチは期待されたようにはうまくいきませんでした。このアプローチが機能するのはギャップがほとんどないときに限られるからです。カスタマイズが多発するようなシステムでは、フィット&ギャップ分析をしただけではどうにもならず、分析の後にあらためてカスタマイズ設計をし直す必要がありました。
その結果ERPパッケージを導入するにもかかわらず、ウォーターフォール型でカスタマイズ設計・開発するという不思議な開発手法が一般的になりました。当然のように開発費用は安くはならず、個別開発でシステムを導入するのとほとんどかわらない費用が必要になるケースも発生しました。
このままでは進化型プロトタイプ開発など夢物語に終わるのかと危惧していたのですが、そんなとき「Sapiens」というシステム基盤に出会いました。Sapiensはイスラエルのワイツマン科学研究所でベースが開発されたシステム基盤で、進化型プロトタイプ開発をするための細かな仕掛けが搭載されています。イスラエルの政府機関をはじめとして欧米の大企業の個別開発システムの実行基盤として豊富な実績を持っています。
日本ではSapiensを「自動開発ツール」としてとらえられることが多いですが、実際には「フルカスタマイズ型ERP」といった方がイメージ的には近い感じがします。詳細は省略しますが、Sapiensにはオブジェクト指向技術で作られた標準的な業務処理機能(カプセル)が組み込まれており、そうした標準機能を選択する形でシステムを開発します。利用者は本番に向けて徐々に必要機能を選択していくことで、進化型プロトタイプ開発が実施できるようになっています。